眼鏡店ではできない眼鏡処方とは
座談会メンバー  岡本 ・ A ・ B ・ C の計4名



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眼科でしかできない処方
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岡本
みなさんのご意見をお聞かせください。
この眼鏡処方は、眼鏡店では無理、
眼科でしかできない……、
という眼鏡処方には、どんなものが
あるでしょうか。
まず、思い当たるのは、調節まひ剤を
使って行なう眼鏡処方……。
これは小さいお子さんの場合に多いのですが、
他にはどうでしょうか。


眼科でしかできない眼鏡処方は「治療を目的とした処方」と
いうことになるのでしょうが、治療を目的とするものは、
ほぼ子供の弱視に限定されるのではないでしょうか。

複視を解消するための光学的対応として、
プリルズム矯正の選択もありますが、
プリズム矯正を上手にできる眼科は少ないでしょうし、
そもそもたいていのプリズム矯正も
眼疾患の治療が目的のものではないと思います。

白内障も緑内障も眼鏡で治療ができるわけではないので、
成人眼鏡のほとんどがメガネ店で対応できるのではないでしょうか。

岡本
今回私が問題にしているのは
そういう観点での区別ではなくて、
調節まひ剤を使わない眼鏡処方で
技術的に、実際的に、眼鏡店では無理、あるいは
優秀な眼鏡技術者でも医学的な知識がないと無理
という眼鏡処方が、何かあるのだろうか、
ということなのです。

大人でも強度の弱視の場合には、
双眼鏡のようなルーペ、拡大映像で見る器械、
特殊な片眼用ルーペ、などの処方(?)は、
慣れている眼科でないと
難しいかもしれませんが、
それ以外で、何かあるのかな、と思うのです。

大人の場合、弱視(矯正視力が1.0未満)と言っても
たとえば矯正視力が0.2〜0.5程度ある眼で
老視がある人が、
新聞などの読みにくさを訴えた場合、
近用眼鏡として、加入が5D以上の単焦点で、
けっこう用がたりる場合が多いのですが、
そういうことに眼科では気がつかないで、
普通の3D前後の加入の処方にしか
していない、ということもありますね。
Aさんも、そういう経験があるのではないでしょうか。


はい、そういう弱視のかたの近用メガネにおいては、
杓子定規の対応しかできない眼科が多いですね。
「老眼鏡は、30pで合わすことに決まっています……」
と言った眼科もありました。

岡本
まったく、患者さん本位ではないやりかたですね。


また、視力が弱いかたに「あなたには合うメガネはありません」
とか、「度数を強くしても無駄です」とか、患者さんがショックを
受ける言葉を平気で言う眼科医もいます。

岡本
本当に合うメガネがないのであればまだしも、
合うメガネがあるのに、それを知らずして
そういう宣告をしたのであれば、無知というものが、
人に対して残酷に作用することがある、
という例ですね。


でも、最近は「メガネ屋さんで相談してくだい」
と言う眼科も増えてきています。

岡本
それは良い傾向ですネ〜!
もしかすると、この「ユーザー本位の……」の
サイトの影響かも。(^^)


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メガネの処方は面倒
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私は眼科の内部事情をある程度わかっている
眼鏡技術者です。
主旨は少しそれますが
ドクターX 大門未知子先生が常に言っています。(^^)
「私、医師免許が無くても出来る事は、やりませーん」
こういう先生が最近増えていると感じます。

【その理由】

眼科医にしてみれば、
とにかくメガネ処方は面倒です。
収入(点数)は低い。
それなりの経験のあるスタッフが必要です。
その検査スタッフは他より高給を出さねばならない。
スタッフの教育は医師には出来ない。

医師は建前上、知ったかぶりをしなくてはならない(^^)
眼鏡処方の結果は、良いのか悪いのか即患者に伝わるし、
クレーム処理がとにかく面倒です。
子供めがねの処方は 本人がクレームを言わないので……楽!

岡本
ところが、多くの眼科医の認識としては、
「眼鏡処方は医療行為である」。
だからメガネ屋がやっていることはホントは
違法性があることであり、
我々がお目こぼしをしてあげているのだ。
というものなわけです。

それで、屈折検査や眼位検査には保険点数はつくが
眼鏡処方にはつかない、と聞いたことが
ありますが、そうではないのでしょうか。

また、眼鏡処方をうっとおしく思う医師(眼科)には、
「眼科では、眼鏡店でできる眼鏡処方はやめたらよい」
という私の論は、渡りに舟のはずなのですが、
自分は今後そのようにすると、公に宣言する眼科医はいないようですし、
それに踏み切る医師も少ないようです。

同業者からの反発があると困るから、ということや
眼鏡処方は医療行為、という固定観念からの
脱却ができないから、ということによるのでしょうか。

もっとも、眼科での眼鏡処方箋によるバックリベートで
そこそこ潤っている眼科医なら、眼鏡処方箋の
発行をやめることはないし、自分の家族なんかに
隣接したメガネ屋をやらせている、という眼科医も
眼科での眼鏡処方箋発行をやめないのは
うなずけますが……。

極端な例では、我々のMLメンバーのMさんが
前におっしゃっていた「眼科の隣で医師の愛人が
経営しているメガネ店」
というのも、ありました。(^^)


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眼疾患で処方度数に違いが?
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岡本
それで、みなさん、どうでしょうか。
白内障、緑内障、黄斑変性、その他の
眼疾患がある場合、
眼科でその病状や診療の状況を
把握している場合と、メガネ店でそれについて
詳しくはわかっていない場合とで、
処方する眼鏡の度数に違いが出ることがあるでしょうか。

ただし、めがね店で測定処方する場合でも、
罹患している疾患が何であるかは
わかっているものとします。

   ●
岡本
どなたからも、ご意見がありません。
ということは、どっちにしても眼科とメガネ店の
処方度数には基本的には違いは出ない(検者の腕しだい)
ということなのでしょう。

それと、もう一つお尋ねします。
たとえば、円錐角膜は、ある程度以上になると、
本人はそのことを知っており、
メガネ屋では「自分は円錐角膜で、コンタクトを
使っているけれど、メガネでも、
できるだけ見えるようなのができるのなら作ってほしい」
というふうな希望をおっしゃいます。

その場合は、やはり眼科での測定処方が眼鏡店での
それよりも良い度数の眼鏡処方ができそう、
ということは考えにくい(メガネ店の検者がヘボな
場合はのぞく)わけですが、

では、初期の円錐角膜であったとして、そうであることを
知っている眼科と、そうであることを本人も検者も知らない
眼鏡店とでは、メガネの測定処方の結果において、
眼科になんらかのアドバンテージがあるでしょうか。


ご質問の条件とは異なるのですが、昨年末に来られた
24歳の男性の事例です。
なおこのかたはコンタクトは持っていません。

円錐角膜であることを本人は知っており、
それはもちろん眼科でそう言われたわけで、
来店時に告知されましたから、
私も知っているわけです。

このかたは、乱視メガネ研究会のサイトと深視力研究会のサイトを
見られて、大型免許を取得したいとご来店されました。

まず、2年前に買われた眼科処方でのメガネ
R:S+0.81 C−2.25 Ax90
L:S+2.12 C−2.50 Ax91

オートレフ値
R:S+0.75 C−3.25 Ax35
L:S+0.50 C−3.50 Ax150
信頼値は??で相当低かったです。

処方度数(5m完全矯正値)(両眼開放屈折検査)
R:(0.9 ×S+3.50 C−2.50 Ax85)
L:(0.8p×S+3.00 C−1.50 Ax95)


オートレフ値はあてにならないので、JBを参考に手探りでやりました。

それでご教示いただきたいのですが、円錐角膜の場合、
オートレフで測るとS値はこのように弱く出るのでしょうか?
経験が少ないものですから、よろしくお願いします。

岡本
円錐角膜のある眼にかぎらず、
瞳孔中心からどれだけの範囲においての測定になるのか、
ということがオートレフと自覚測定とで違うから、
ということもあると思いますが、
たいていは、オートレフの方が乱視は
少し強めに出る傾向がありますね。
(それについては、統計データを以前に日眼研で
発表しました。何号の雑誌に載せたかは
忘れましたが、たしか、0.25〜0.50D
くらいの差だったと記憶しています)

この場合は、円錐角膜なので、
測定範囲(測定面積)の少しの違いが
これだけの球面や乱視の値の違いを
生んだのではないかと思います。

それと、両眼開放でこの値を得たのですから、
球面度数が自覚検査でプラスよりに動いたことの
理由として、両眼開放による調節除外効果も
多少はあるのかもしれません。

自覚的屈折検査に熟達した眼鏡技術者であれば、
オートレフでエラーが出ても、別に困らなくて
その眼で可能な限りの視力が出る度数を
検出するのは
さほど困難なことではないと思うのですが、

眼科の中には、屈折検査をオートレフに依存していて、
自覚的屈折検査で最高視力を得るSとCとAxを
正確に求めるということが満足にできない(ほとんどできない)
ところもある(少なくない)ようです。

そういう眼科だと、円錐角膜の眼に、ベストに近い
度数のメガネを処方するというのは無理かもしれませんね。


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眼鏡店での斜位矯正への警告
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岡本
それと、ある医師は「ドライアイなどの眼疾患があり、
それが原因の眼精疲労があった場合には、
斜位を矯正しても眼精疲労はおさまらない。
メガネ屋の検査では、そういう点で心配がある」
と言っておられました。
それについて私はこう思います。

プリズム矯正の対象となり得る斜位は、
大きく分けて上下斜位と水平斜位がありますが
前者の場合、眼疾患の有無とは関係なく
通常はそれを矯正すると、装用テストにおいてさえ
すぐに眼精疲労が軽減や解消をすることが多いので、
この医師の主張とは関係がないといえます。

では水平斜位はどうか。
これについては、そのプリズム矯正により、
下記の1)〜4)のうちのどれか(単独または複数)が、
その場で多少とも(あるいは、大幅に)見られる場合にしか、
プリズムが処方されることは、まずないと思います。
(よほど、プリズム好きのメガネ屋は別として)

1)複視が解消する。
2)立体視などの両眼視機能が向上する。
3)矯正視力がアップする。
4)眼精疲労が緩解する。


もしも、この処方が、1)〜3)の狙いで行われた
場合には、先の医師の危惧は関係がない、というか、
プリズム矯正のご利益がないということはないわけです。

しかし、そうでなく、眼疾患がある眼に対して、
そうとは知らずに4)のねらいのみでプリズム矯正が
行われた場合はどうでしょうか。
その場合でも、その矯正が眼の視機能に悪影響を
及ぼさないものであれば、
それが問題にされる理由はないわけです。

そして、よほどプリズム好きな変わったメガネ屋でないかぎり
その場では被検者が何ら良さそうな反応も示さないのに
単に「測定したら斜位置があったから」というだけの理由で
眼精疲労が緩解するとして、プリズム処方をする
人は、まあ、いないだろうと思います。

逆に、もしも、この医師の主張の理由をもって、
「眼鏡店で眼精疲労を訴える人に対して、
眼科受診を経ないプリズム矯正はご法度」
ということが正しい主張であり
メガネ屋がそれを遵守したとしますと、

(1)
ほとんどの眼科(すべて、とまでは言いませんが)で、
眼精疲労を訴える患者さんの、その原因が
斜位であった場合に、それを診断で見逃すことなく、
適切なプリズ矯正や視機能訓練の指導などが
できるようにならなければなりませんが、
いまのわが国の眼科で、その見逃しを防ぐのは
到底無理ですよね。
(たとえば、正視に近い人なら0.5△の上斜位により
眼精疲労をきたしている場合があるのですが、
カバーテストで、1△未満の眼の動きがわかりますか?)

(2)
これまで、検眼技術レベルの高いメガネ屋が
多くの斜位を矯正して、お客様の眼精疲労からの
脱却を実現してきたのですが、
今後はそれもできなくなります。

なお、もちろんですが、眼科で眼精疲労の原因が
わからないと言われて、効きもしない点眼薬を渡されて、
いっこうに改善せずに、メガネ店のプリズム処方で
なんとかなった、という例も、これまでに私は
何度も経験しています。

その例は、たとえば、日本眼鏡技術研究会の会誌にも
多く掲載されています。
     http://www.ggm.jp/ngk/kaishi.htm

なお、誤解のないように言っておきますが、
私は「メガネ屋のプリズム処方はすべて必ず
有効に働く」と主張するものではありません。

神ならぬ人間がすることですから、
そんなことは無理に決まっており、
それは、眼科の治療のすべてが効を奏すとは
限らないのと同じです。

私が言いたいのは、この上記の医師の主張をもとにして
もしも、メガネ屋でのプリズム処方をやめるとなれば、
それは角を矯めて牛を殺すことになるのではないか、
ということです。


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よく聞く「警告」
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「メガネ店では、眼の病気をわからないでメガネを作ってしまい、
そのために病気の発見が遅れて、
取り返しのつかないことになることがある。
だから、メガネ店での眼鏡処方は良くない」

という意見は昔から眼科医からときどき聞きます。
最近も岩手県の水沢市の鈴木武敏医師が
言っています。

参考 → http://www.ggm.jp/ugs/q/suzuki2.html

そういうことをおっしゃる眼科医に私は問いたいです。
では、どうするのがよいのですか、と。

いろんな制度(この場合は、法律的な
制度というよりも、社会的な慣習)において、
完全無欠なものはありえないのです。
どれにも、良いところと
そうでないところがあるわけです。

いま現に行われている制度は、それなりに
理由があってそうなっているのではあるが、
少し改良できる余地があって、その改良に
費やす費用やエネルギーと、その効果に
おいて、後者の方が優ると思えば
改良するのがよいわけです。
それが現実的な大人の考え方というものでしょう。

わが国における眼鏡処方の制度を、いまのやりかたから
全然変えないのがよいのか、がらっと変えるのがよいのか、
あるいは、少し変えるのがよいのか、
変えるとすれば、どのように変えるのがよいのか。
大きく分ければ下記のようになると思います。


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3つの制度
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1)いまのまま、何も変えない。
 これにおける問題点は、このサイトでいろいろ述べているので
 改めてここに書くことはしない。

2)メガネ店では眼鏡処方を一切しないように変える。

そのようにすると

 ・眼疾患の早期発見早期治療は少しは増えるだろう。
 ただし、白内障などは早期発見してもしかたがないし、
 緑内障も、それに対する治療が、本当に失明時期を
 遅らせることができるというエビデンスはないはずである。
 (点眼薬が眼圧を下げ得る、ということが、失明時期を
  遅らせることにつながっているというデータはないはずである)
  もちろん、すべての眼疾患で早期発見が無意味、なのではない。 
 ・ひまな眼科は助かる。
 ・忙しい眼科だとよけいに忙しくなり、眼科本来の治療に
  支障をきたす。
 ・眼鏡処方の巧拙という面において以前よりも
  全体的なレベル低下をもたらす。
・医療費の増大が起こる。

  参考 → 「寝亀と王様」
  http://www.ggm.jp/ugs/negame.html

3)眼科では、眼科でしかできない眼鏡処方でなければ
  眼鏡処方をやめることにする。
  
  眼科医の既成概念をかえて、これを実行すれば
  国民にとっては、一番良い状態となる。
(このように変えて困るのは、眼科の眼鏡処方箋で
   何らかの得をしている眼科や眼鏡店である)
 
そして、もうひとつ言っておきますと、
メガネ屋へ眼に合うメガネを測ってもらいに行く人は
次の事実を知っておけばよいのです。
(まあ、常識だとは思いますが)

(1)普通はメガネ屋は、治療が必要な眼疾患を
 新たに指摘したりはしてくれない。
 医者ではないのだし、そういう目的で眼の測定を
 するのではないのだから。
 だからメガネ屋による眼疾患の見落とし(?)を
 許せないと思うのであれば、初めから眼科へ行くべし。
(ただし、メガネ屋でも、運がよければ、
 治療が必要な眼疾患を示唆してもらえることがある)

(2)眼科でも、医師によっては、眼疾患の見落としや
 見立て違いがあるので、良い医師に診てもらう
 ことが重要である。

この(1)を国民が心得てさえいれば、
メガネ屋での眼疾患の見落としがどうこうという
眼科医の言い分は、まったく無意味となるのです。


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〜ユーザー本位の眼鏡処方を推進する会〜

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