[メール対談]   鈴木武敏医師の主張はおかしいです


   眼科併設眼鏡店主A & 薬剤師A

  日本眼鏡学会の『眼鏡学ジャーナル』(Aug2009)に載った鈴木武敏医師の所論への公開質問
  を読んでの、おふたかたの感想を以下に掲載します。(岡本)               

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  眼鏡店主A 
  私がいま居る眼科付設店での日常を鑑みた時に、鈴木医師のひとりよがりな主張には「ふざけるな!」という一言がまず頭に浮かびました。
  同列に論じる事ができないのは承知ですが、私が籍を置く眼科付設店に関して申しますと、眼鏡処方箋発行の意義は眼疾患発見のためではなく、
  それらに付随する検査点数欲しさが主な目的だからです。
  「眼鏡処方箋を月に300枚発行して、その内の7割が付設の眼鏡店で眼鏡を購入すれば大儲けできる」というのがウチの眼科院長の考え方です。
  この眼科はどんな病気であれ、コンタクトレンズの定期検査だけの方であれ、漏れなく眼鏡処方箋はついてきます。

  皆様も御承知の通り、眼科検査員が行う屈折検査の多くはスクリーニングの意味合いが濃く、弊社でも単眼で1.0以上、
  両眼でも1.0以上出ていれば問題なしとされ、1.0以下でも弱視と判断されて、それで終わりです。
  患者さんからも特に主訴がなければベルトコンベアー式に処方箋が発行される仕組みになっています。
  (主訴があっても視機能関係に関しては無視されます)

  院長に関しては、一人当たりの通常の診察時間が約10秒という短時間で行われ、老齢のかたであれば主訴がないに関わらず、
  白内障(程度の大小に関わらず)にかこつけて、眼科へ定期的に通わせる動機付けの意味合いで、
  第二薬局との連動によるカリーユニの大量処方が行われています。
  結果、「軽い白内障で特に問題は無いけども、眼鏡が合ってないようだから処方箋を出すから眼鏡を作ってください」と、
  不必要な検査と今よりも更に合っていない眼鏡処方箋で眼鏡販売へ結び付けようとする魂胆です。

  また、上記で述べた「月に300枚の眼鏡処方箋」に関しても、その処方の殆どが無資格のアルバイト検査員と不勉強なORT達の処方です。
  その検査員達がスクリーニング検査のみで発行する処方箋の多くが、斜視・斜位で苦しむ人を見逃したり、
  不必要な低矯正で強引に納得させたり……と、眼科の傘の下だからこそできるんだろうと思える強引な処方(?)を繰り返しています。

  「ユーザー本位の眼鏡処方を推進する会」や視覚機能研究会や日眼研の皆様の事例報告にもあるように、
  眼科での稚拙な眼鏡処方で苦しんでいる方達は、真面目な眼鏡店が救っている事実があることを鈴木医師には知ってもらいたいです。

  また、無責任な眼鏡処方箋を発行して、その眼鏡が合わなければ、責任(無料交換)を眼鏡店に押し付けてきた、
  全国の同業眼科の風潮を棚に上げての鈴木医師の論は私には許し難いです。

  それに、病気の見逃しがあるとすれば、眼鏡店での見逃しよりも、眼科での粗いスクリーニング検査からの方が生まれているのでは?
  と感じることが、私は多いです。
  弊社の眼科を含む多くの眼科は、患者さんからの主訴が無ければ疾患を発見できるシステムにはなっていないように考えますし、
  両眼視を考慮しないスクリーニング検査を主とする眼科の屈折検査では、患者さんが強く主訴を訴えない限り、
  失明を予防する等という主張は通じないのではと感じます。
  鈴木医師と弊社の院長、規模の大小、志の違いはあるにせよ、同じ国家資格を持ち、医業を生業としている人間同士で、
  何故これだけコンセンサスが取れていないのか?
  何が「眼鏡店での検眼はやめて眼科に委ねよ」なのだ!……と私は問いたいです。

  鈴木医師の主張が、本当に患者さんの事を考えているのであれば、その持論の矛先は先ず全国の眼科医に向けて発信されるべきであって
  (主張が正しいかどうかは別にして)、眼鏡界に向けて発信するのは御門違いも良いとこだと私は思います。

  眼科処方に関しては、私はどうしても感情的になりがちで、このような狭い了見で発言してしまい申し訳ありません。
  岡本先生のように見識深い意見は私には到底申せませんが、私は眼鏡業界においても医薬分業のように「病気は病気のプロである医師に、
  検査は眼鏡のプロである眼鏡店に」という風になれば良いのになと思っております。
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  薬剤師A
  あなたも眼科の第二薬局をご覧になっていて良くおわかりの通り、形の上では、今の世の中は「医薬分業」だと言われていますが、
  現実は、違います。 現状では、病院における患者への医薬品処方のオーダーを薬剤師に出すのは医師であり、
  薬剤師はそのオーダーに、明らかな間違いがないかぎり、正すことはできないのです。
  白内障のピレノキシン製剤についても、薬剤師は医師からオーダーを受けた限り、薬剤師が医療行為ができるわけではないですので、
  その患者さんが本当にその薬を必要なのかどうかまでは調べようがないですので、そのままの量を処方するしかできないのです。

  医師も薬剤師も国家資格であり、業務独占の資格であるのにもかかわらず、この現状です。
  もちろん、非常に志が高い薬剤師ならば、大量の緑内障点眼薬や長期にわたる白内障点眼薬の処方を見て、
  眼科医師にいちいち疑義紹介をすることもあるでしょうが、きっと、その薬剤師はクビになるでしょうね(^_^)

  医薬分業になって、何が誤算だったかといいますと、当初、発案した首脳陣は、医薬分業になれば患者がかかりつけ薬局を持つようになり、
  患者のトータルケアーを薬局が責任を持って行うことが出来るであろう、ということを考えていました。

  ところが、実際はこのかかりつけ薬局制度はうまくワークしておらず、たいていの患者さんは、医院の門前の薬局で薬をもらってしまっています。
  眼科の第二薬局のような、医院の門前薬局は、医院の親族が経営者だったり、医院との何らかの利益関係があることが多いのですが、患者さんが、
  そういった薬局で、眼鏡店店主Aさんの表現にもあったように、「オートメーション式に」薬をもらってかえるという行為が、
  医者が薬でボロ儲けということを助長しているのです。

  処方箋は日本全国どこの薬局でも受け付けてくれるのですから、わざわざ門前薬局に持って行かなくてよいのです。
  医薬分業になって、保険点数の制度も変わっており、薬代の他に、薬剤の処方に対して、処方料・服薬指導料も加算されています。
  このような、建物だけが違うというような医薬分業では、患者にとっては、その場で薬をもらえず、
  別の建物に薬をもらいにいくという手間が増えたし、処方料・服薬指導料も加算されるしで、メリットが全くありません。
  今の状況で、医薬分業の恩恵を一番受けているのは門前薬局を構えている医院ではないかと、薬剤師Aは感じています。
 
  それでも、ある一定割合の、意識の高い患者は、「かかりつけ薬局」を持つことを意識し、いろいろな医院や診療科にかかっても、
  優秀で自身が信頼出来る薬剤師のいる一つの薬局に薬剤処方を任せ、服薬の相談をしています。
  薬局の中でも、志をもって、門前になることを拒む薬局もあります。

  そのような薬局は、ボロ儲けはしないものの、町のあかひげ薬局のような存在感を示し、日々、患者さんに感謝されとても、
  薬剤師としてはやりがいがあるそうです。
  ちなみに、そういう薬局では辞める人が少ないため、人材募集が少ないのですが、それとは対照的に、
  年中、「薬剤師パート募集!」という張り紙をしている門前薬局を目にします。

  メガネの場合も、多くのお客さんに信頼される「かかりつけメガネ店」であれれば、安泰な気がします。
  それと、鈴木医師の『眼鏡学ジャーナル』での原稿を読んでみて、すでに岡本さんが書いておられる点については省略しまして、
  その中で特に、次のことを申し上げておきます。

  「眼科医との連携のない眼鏡処方は社会医学的に看過できない問題を含んでおり、
  今後、肝炎問題と同様の訴訟に及ぶことが危惧されており……」としておられますが、
  この「肝炎問題と同様の訴訟」という意味がさっぱりわかりません。

  きっと、鈴木医師は、医師なのに、肝炎問題の訴訟の本質をわかっていないのでしょう。
  薬害肝炎の原因となった、フィブリノゲン製剤は、ヒトの血液から血液凝固因子であるフィブリノゲンを抽出精製した血液製剤で、日本では、
  旧ミドリ十字(現田辺三菱製薬)が製造販売していたもので、厚生省は輸入非加熱製剤によって、エイズだけでなく、
  肝炎に感染する危険性があることをとうに承知したうえで、放置し続けたのです。

  厚生省は、薬害エイズのとき、血友病の治療以外で血液製剤を使われた患者の実態調査を行ないました。
  このとき、騒がれていたエイズのほうだけ調査して、肝炎は放置したのです。
  早く知らせていれば、早期治療で病気の進行は防げた。厚生省は患者から治療の機会を奪ったんです。

  2002年に厚生労働省が、製薬会社の「三菱ウェルファーマ」(旧ミドリ十字、現田辺三菱製薬)から提出を受けた文書の中に、個人ごとの情報には、
  イニシャル・氏名や住所、投与日、症状、医療機関名などが含まれており、個人を特定できるケースも複数存在したのに、厚生労働省と製薬会社は、
  個人が特定される患者に対しても事実関係を告知することなく、2007年10月に発覚するまで放置していた。
  このため、「国や製薬会社は20年以上も薬害の事実を隠ぺいしてきた」、「2002年の時点で告知をしておけば、
  被害者は適切な治療をより早期に受けることもできた」とのことでの訴訟なのです。

  端的に言えば、国と製薬会社がグルになって、有害な薬品を投与したという「すでに明らかにわかっていた事実」を隠蔽しつづけていたことで
  患者が訴訟を起こしたのです。

  この訴訟と同様の訴訟に及ぶとは、どういう意味なのでしょうか?

  眼鏡士が、そのお客さんが病気だと明らかにわかっているのに、それを行政と結託して隠蔽してでも眼鏡を売ろうとするということですか?
  どこに、そんな眼鏡士がいるのですか? *