(株)和真(東京銀座)さんへの質問

           和真さんへの質問

   (株)和真(東京銀座)様

        平成18年1月8日 眼鏡公正広告協会     岡本隆博
                  http://www.ggm.jp/gkkk/

   突然のメールで失礼します。
  私たちは消費者の立場に立って公正な広告表示を念願して活動している団体です。
  私たちは、以前からの貴社の積極的な新製品開発姿勢に対しては敬意をもっていますし、
  貴社が特許権を持っておられるムービングパッドの性能に関しましても高い評価をいたします。

   さて、貴社の「全視界」メガネに関するホームページ(以下、HPと略す)、
   http://www.washin-optical.co.jp/zenshikai/(平成18年1月1日現在)を拝見して、
   疑問を感じた点に関して質問をさせていただきます。
   (《 》内は貴社HPからの原文のままの引用です)

    このHPのトップページに大きく《全視界メガネ》と書いてあり、「全視界」の直後に○の中にRが
   入ったマークが入れてあります。それゆえ、「全視界」は特許庁に登録された商標であるとわか
   りますし、さらに、工業所有権に詳しい人であれば、それは当該商品の効能を表すものではない
   ということもわかります。

    さて、「遠近両用メガネ」という言葉は広く知られていますが、その場合の「遠近両用」はもちろ
   ん登録された商標ではなく、そのメガネの用途や機能(効能)を表すものであり、その名称を見
   れば、誰でも「遠くも近くもはっきり見えるメガネ」だと理解するでしょう。その場合、ぼやけてでも
   見えるという意味ではなく、ハッキリ見えるのだと解釈する理由は、ぼやけてでも見えればよい
   のなら、わざわざ遠近両用を使わなくても、遠方専用でも近く専用でも、遠くも近くも一応は見え
   るというのは誰でもわかることであり、したがって、「遠近両用」と名乗るからには「遠くも近くも
   ハッキリ見える」からなのだ、と一般の人が解釈するのは理の必然であろうと思います。

    では、そのことを踏まえて《全視界メガネ》という語彙を考えてみましょう。
   この語彙を読めば、普通の人はどういうふうに理解をするでしょうか。そのメガネで見える視界
   の範囲の中は、一部はハッキリ見えるが一部はそうでもない、というふうには受け取らずに、
   そのメガネでの視界の全体においてハッキリ見えるメガネ、というふうに理解すると思われませんか。
                                                         (質問1)

    もしも、この広告主である貴社が、そう思われないのであれば、「全視界メガネ」という語彙を
   普通の人はどのように理解すると貴社では考えておられるのかということをお聞かせいただけ
   ませんでしょうか。(質問2)

    ご承知のように、その商品の効能(機能)を表す文言は商標としては登録されません。
   ということは、メガネなどを指定商品として「全視界」という名称を登録申請された特許庁は、
   その名称に関して「これは効能を表すものではない」と判断したのでありましょうし、その商標を
   当該商品の宣伝に用いることそれ自体に違法性はまったくないことは、もちろんであります。

    特許庁は、メガネの類で申請された商標が「全視界メガネ」ではなく「全視界」だけであったし、
   しかも、「全視界」だけなら、視界の全範囲をどのように見るのかということが示されていないので、
   それはその商品の効能を表すものではないから、それを商標として認めたのであろうと、
   私は思います。

   しかし、たとえば、補聴器で「全音域型」というのがありますが、もしも、補聴器の商標として
   「全音域」というのを申請しても、おそらく拒絶されると思います。
   なぜなら、その名称がすでに用いられているということの他に、「全音域に渡って明瞭に聞
   こえるという効能を容易に連想させる名称であるから、それは商標として1社が独占すること
   はいけない」という考え方から、それは拒絶されるであろうと私は思います。

    メガネにおける「全視界」という名称は、登録商標なのですから、形式的には、その言葉の
   表面上ではただちにそのメガネの効能を直接に表すものではないのでしょうが、しかし、
   実際のところは、全視界を明瞭に見ることができる、という効能を消費者に容易に連想させ
   やすい名称であり、下記のAとBの2種類の誤解を生みやすい名称だと言えるのではない
   でしょうか。

   A.「いまのメガネは遠くは良く見えるが近くは最近見えにくい。全視界の遠近両用なら、
     遠くも近くも全視界がハッキリと見えるのだろう」(主として、遠近両用を使ったことがない
     人に、この誤解が多いと思います)

   B.「遠近両用メガネは遠方視でも近方視でも側方においては正面視の場合ほどには
      ハッキリ見えないが、全視界メガネなら、側方もはっきりと見えるメガネなのだろう」
     (いま遠近累進を使っている人に、この誤解が多いと思います)
      こういう誤解がありそうだという、私の意見に貴社は同意されませんか?(質問3)

   もしも、同意されないのでしたら、その理由をお尋ねいたします。(質問4)

   現に貴社のHpの「よくあるご質問」のページに、《Q)チラシで全視界メガネは全部の見え
   方が良好となっていますが?》という質問が紹介されていますが、これはまさしく消費者が、
   上記のAかBの誤解をしているからこその、この質問が出たのではないでしょうか。

   また、先日当店に「おたくは全視界メガネ、やってるの」と言ってこられた中年男性は、
   話してみるとBの誤解をしておられました。

   それから、少し前の話になりますが、平成12年以前に首都圏の新聞にときどき掲載された、
   大學眼鏡研究所(東京都千代田区)の広告に、「全視界メガネ」と大きく銘打ったものがあり
   (それを私は、私が編集する雑誌の記事にしました)、そこにおいては、その名称のレンズの
   説明として「あぶなくない遠近両用」であるとの解説がなされていたのですが、貴社の工業
   所有権担当のかたは、そういう広告があったことをご存じなのでしょうか。(質問5)


   閑話休題、以上のようなことで、特許庁がこの「全視界」なる名称をメガネの商標として認可
   したことに対しても、私は疑問を感じるのですが、それをここで言ってみても始まりませんので、
   それについてはこれ以上申しません。

   それで、その商標が機能を匂わせるものであってその商品の機能を表現している名称であると
   誤解させかねない紛らわしい商標であった場合、その商標を用いる貴社が、その商標である
   「全視界」を使うときに、消費者からの誤解を受けることを恐れるのならば、そういう誤解を
   防ぐために、できるだけの措置を講じるべきではないかと私は思うのです。
    たとえば
   (1)メガネの用途や効能を表す形容詞であるかのような印象を受けるところの商標である
      「全視界」を「メガネ」の直前に形容詞(連帯修飾語)的に続けて用いて「全視界メガネ」
      とか「全視界フレーム」と表記するのではなく、言葉の順序を逆にして、「遠近両用メガネ
      『全視界』」というふうに「全視界」を固有名詞的にのみ用い(実際に、これはもはや
      固有名詞なのですから)、かつ、「全視界」の語彙の直後に必ず、○の中にRを入れた
      記号か「TM」記号を入れて、登録商標の固有名詞であるとわかる書き方にしていただく
      ……(そうすれば、「全視界をハッキリと見れるメガネ」との誤解を招く可能性が減るから)
      このことを、広告のタイトルや見出し部分だけでなく、広告本文においても励行していただ
      きたいと思うのです。

   (2)さらに、広告宣伝の片隅にでも、「『全視界』は、登録商標であり、この商品の効能を表す
     文言ではなく、このメガネで側方も含めた全視界において遠くまたは近くが明視できるとい
     うことではありません。」というようなただし書きをつけていただく。

     (ビジュアルな広告におけるハメコミ画面などに、よく「これはイメージ画像です」などと
      書いてありますが、あれも消費者による誤解を防ぐためでしょう)
 
      以上の2点を私は推奨したいのですが、この提言に関する貴社のお考えを
      お聞かせいただけませんでしょうか。(質問6)

   たとえば、和真のフレンドショップにもなっておられる、メガネのオバタ(北海道北見市)さんのHP
   http://k-mint.okhotsk.or.jp/users/obata/のトップページ(2006.1.1現在)には、
   《今 時代は、普通の遠近両用メガネから 遠用・中間・近くがさらに良く見える 全視界メガネ
   へと変わりました。……(後略)……》と書かれています。

   ここにおいては、「遠近両用メガネ」と対比させるような感じで、それに代わるものとしての
   「全視界メガネ」という表現がなされています。「遠近両用メガネ」という語彙の中の
   「遠近両用」は用途や機能を表すものであるから、それと対比するように「全視界メガネ」と
   表現すると、「全視界」はメガネの用途や機能効能を表すような使われかたをなされている
   と言わざるを得ません。

   そういう使われかたは、商標本来の目的に添わないものであると私は考えますが、
   この店のフランチャイザーである貴社としては、この表現についてはどう思われますでしょうか。
                                                      (質問7)

    また、貴社のHPの、「よくあるご質問」のページに、下記の記述があります。
   《Q)チラシで全視界メガネは全部の見え方が良好となっていますが?
    全視界メガネは、遠・中・近と全ての部分がバランスよく見えるということを表現しています。
    また,見え方だけでなく眼の疲れや、ユレ・ユガミも解消してくれます。》

   この回答の最初の記述「全視界メガネは……表現しています」というのは、少し舌足らずな
   文章であり、正確な日本語にしますと、「全視界メガネという名前における『全視界』という
   名称は、……表現したものです」ということになります。 

   すると、「全視界」とは、そのメガネの効能を表現した語彙だと、その商標権をお持ちのかた
   自身が言っておられることになると思うのですが、貴社が「全視界」を商標として登録申請さ
   れたのは、その語彙は効能を表すものではないから、特許庁に認めてもらえるであろうという
   認識があったからではないのでしょうか。(質問8)

   そしてHPの「『全視界』メガネの機能」のページに下記の記述があります。
   《●そこで 和真は、お顔に掛けたフレームを自由に6ミリ上下させ、適切な位置にマグネットで
   止まる「全視界フレーム」に、さらに、一流メーカーと共同企画・設計をした遠近の新レンズ ビュ
   ーを組み合わせた「全視界」メガネを・・・世界で初めて開発しました。》

   この文章のあとの方では、「全視界メガネ」、とせずに、「全視界」メガネ、として、「全視界」だけ
   をかぎかっこに入れておられます。その理由は「全視界メガネ」という登録商標はないからだと
   思います。ところが、フレームの場合には「全視界」のみではなく「フレーム」まで含めて一重の
   かぎかっこでくくってありますが、貴社は「全視界」の他に「全視界フレーム」という登録商標も
   お持ちなのでしょうか。(質問9)

   もしそうでないとすれば、かぎかっこでくくった「全視界」(これは登録商標でしょう)と対応する
   ような表現で「全視界フレーム」もかぎかっこでくくって書くと、「全視界フレーム」までも登録
   商標であると誤解される恐れが生じると思われませんでしょうか。(質問10)

   それから、貴社は、下記の1)と2)のどちらに関して「全視界フレーム」と呼ぶべしという見解を
   お持ちなのでしょうか。(質問11)
      1)ムービングパッドのついている、すべてのフレーム
      2)貴社から出荷される時点でムービングパッドがついているフレーム
      3)上記2)のうち、装用者自身が前傾角を変えられるフレーム

    また、貴社は下記の4)と5)のどちらに関して「全視界メガネ」と呼んで良いという見解を
    お持ちなのでしょうか。(質問12)
      4)「全視界フレーム」に貴社の全視界ビューレンズ(遠近両用)が入ったメガネのみ
      5)「全視界フレーム」に全視界ビューレンズを含む遠近両用レンズが入ったメガネ

    そして、貴社は、貴社のフレンドショップに対して、フレンドショップが行う広告宣伝などに
    おいて、消費者に誤解を与えかねない商標である「全視界」の使い方に対して、的確で
    わかりやすい情報を提供しておられるのでしょうか。(質問13)

    (私があるフレンドショップのかたに「全視界」のことをいくつか電話で尋ねて、答を聞き
     ましたところ、上記の質問11と12に関しては正確に理解しておられないと感じました)

    また、商品に関する登録商標においては、当該商品にその商標を明示して、他商品との
    識別性を持たせるのが通常であり、そのための登録商標だとも言えるわけですが、貴社
    のコンビュ枠には「全視界」なる登録商標が記されていない(2006.1.1現在)ようです。
    これは何故なのでしょうか。(質問14)

    そこに「全視界」の商標が入っていない限り、
    (1)貴社とは無関係の枠に単にムービングパッドがついただけの枠に貴社とは無関係の
      遠近両用レンズが入ったメガネや、
    (2)フロント部の高さが変わるクリングス部(ムービングパッドとほぼ同様の効果を持つ)を
      備えた枠に普通の遠近両用のレンズがはいったものと、
    (3)真正の「全視界メガネ」、
      との見分けは容易ではなく、(1)や(2)のメガネを「全視界メガネ」と言って販売されたり、
      あるいはそう理解したりするユーザーが出てくることも十分にあり得ると思うのですが、
      それに対して貴社は、枠に「全視界」の商標を明記することや、その他の何らかの対策を
      おとりになるおつもりはないのでしょうか。(質問15)

    なお、貴社がレンズメーカーとの共同で開発発売された、《新レンズビュー》は《広視野を確保
    したすばらしく良く見える遠近両用レンズ》だとのことですが、それだけではあまりにも抽象的
    すぎて、よくわかりません。このレンズは、従来の遠近両用レンズと比較して、具体的にどの
    ような性能のアップがあるのでしょうか。

    従来の貴社でよくお使いになっていましたレンズとの比較の図や数値などでそれをお示しい
    ただけないでしょうか。(質問16)
    (あるいは、そういう比較数値はないが、盲検法によるモニターテストの結果があるというの
    であれば、それをお示しいただいてもけっこうです。

    そして、貴社と共同開発で新しく遠近両用のレンズを作ったレンズメーカーはどこでしょうか。
                                                     (質問17)

    もし、そのメーカー名は言えないということであれば、なぜ言えないのかという理由を
    お尋ねします。(質問18)

    そのレンズは、従来商品の名前を変えただけのものではないと私は思いますが、
    質問16と17にきちんとしたご回答をいただけたならば、その私の「思い」はより強い
    確信に変わるわけです。

   それから、貴店のHP(2006.1.1現在)
   http://www.washin-optical.co.jp/03_shop_info/03_ginza1.html
   に、下記の記述があります。
   《 特に遠近両用メガネの場合は、視力テスト及びメガネ作成時における精度が大きく見え
    具合を左右します。和真 銀座本店では、熟練のエキスパートがメガネの精度に妥協を
    許さず 丁寧に時間を掛けて作製するため、お客様を1日50名様に限定させて頂いております。》

   と書かれていますが、「精度に妥協を許さず」とは、たとえば、遠近両用レンズの乱視軸と、
   レンズの設計水平軸とが1度でもちがえば、そのレンズではメガネを作らずにレンズをメーカーに
   再注文する、ということでしょうか。(質問19)

   もしそうでないとすれば、具体的にはどういうことなのでしょうか。(質問20)

   以上、貴社は商道徳を重んじメガネ業界の模範となるべき立派な企業だとの定評がある会社
   でありますゆえに、私たちはあえて今回の質問をさせていただきました。

   なお、今回の質問は私が編集しております「日本眼鏡技術研究会雑誌」の次号に掲載いたします。
   そして眼鏡公正広告協会のHPにも掲載します。

   貴社からのご回答があれば、それも掲載します。
   (ただし、ご回答が長い場合には原文のままではなく要旨のみの掲載とすることもあります)
 
 
  質問書を発送して約10日後に、和真さんから、 下記のお返事をいただきました。



     平成18年1月18日 眼鏡公正広告協会  岡本隆博様

   初春のみぎり、岡本様におかれましては、お元気にご活躍のことと存じます。
  さて、早速ではございますが、新春早々に弊社宛にメールを頂戴いたしました。
  内容を拝見しましたところ、弊社といたしましても参考になるところが多く、検討を
  必要とするものや当商品の表現を明確にするものなど、今後消費者に正しい理解を
  していただくためにも有り難いご指摘と拝察しました。

  改めて貴殿の卓越した見識に対し敬服している次第でございます。
  いずれにいたしましても、弊社にとり重要な懸案だけに少し時間を頂戴いたしたく存じます。
  正式なご回答は2月末か、3月上旬になると考えておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
  本日はとりあえず、ご一報を申し上げました。 寒さ厳しい折から、どうぞご自愛ください。

                         株式会社 和真  代表取締役 根岸 亨


 

   株)和真 根岸 亨様    2006.1.25  眼鏡公正広告協会  岡本隆博

  お返事をありがとうございました。 当方が提示しました疑問点を真摯に受け止めて
  いただいたようです。 貴殿からのお返事を さっそく当方のホームページに掲出
  させていただきました。

  なお、2月末から3月初めごろに具体的なご回答がいただける とのことで期待して
  おりますができましたら、総論的な ご回答ではなく、番号を振った個別の質問に
  対して個別のお答えを賜りましたら幸いでございます。

  末筆ではございますが、厳寒の候、ご自愛ください。



   −−−−和真からの回答への反論 −−−−−−−−−−−−−−

   (株)和真 根岸亨社長様 
          取締役会長室長 緒方正義様

   2006.3.19 眼鏡公正広告協会  岡本隆博

   前略 
   緒方様(以下、貴殿、と書きます)からのお手紙を拝見しました。
   当方はメールによるお返事を希望しましたが、書簡によるお返事であったことと、そして、
   質問番号に逐一添ったものでなかった点と、さらに、最初の私からの質問も含めて書簡の
   非公開を望まれた点を残念に思います。

   当方は公開を前提として質問に対するお返事を求めたのですから、返事として公開される
   のを希望しない書簡を送られた事それ自体が矛盾です。
   公開を希望されないのなら文書を送らず面談に来られたらよいのですし、あるいは、
   返答するに値しない質問だと思えば、返答をせずに放置されてもよいのです。
   公開質問に対して相手から回答を求められて、それに回答をするかしないかは
   貴殿のご自由なのです。

   その当方に書簡でお返事をいただいたのですから、そのお返事は原文のまま全文を
   どこに掲載しても、法的にはもちろんのこと、道義的にも何の問題もないわけです。
   それがものの道理です。

   しかしながら、貴殿からのお手紙は長いものでしたので、その全文をそのまま掲載する
   のではなく、要点をまず私なりに整理列挙し、それに関する私の意見を述べます。
   以下(1)〜(10)は貴殿からの手紙の重要な点に関する要約です。
   (一部は原文のまま引用します)

   (1)今回のご提言に感謝し、それを真摯に受け止めてお客様により満足いただけるように、
      いっそうの努力を重ねる所存である。
   (2)私(岡本)の質問の中には和真の営業上の信用を害する恐れのある内容があるので、
      それを広く告知流布する行為は不正競争防止法第2条1項14号に抵触すると考えら
      れるから、眼鏡公正広告協会のウェブサイトや日本眼鏡技術研究会雑誌に掲載するの
      は控えていただきたい。  
   (3)遠近両用レンズを使用したメガネにフレームを上下させるマグネットパッド機構を付け
      たもの全てを全視界メガネと弊社では呼んでいる。(原文のまま)
   (4)フレームにマグネットパッドをつけることにより中間から近くの見え方が改善された
      メガネを全視界メガネと弊社では定義しています。(原文のまま)
   (5)(ここも特に微妙な文章のあやがあるので、少し長くなりますが原文のまま引用します。
      ローマ文字の符号は引用者によります)
     (引用はじめ)商標法では、商品の効能等を直接的に表示した商標は登録されないが、
     それらを間接的に表示するものは登録される。(←a)商標とは自他商品を識別する
     ものであることが本来望ましく、特に間接的表示は、その2つの効果を有するから
     である。(←b)無論、そのような間接的表示である登録商標は多数存在する。(←c) 
     よって、「全視界」を遠近両用メガネの効能等の間接的表示として用いることは
     何ら問題ない(←d)と認識している。
     また、間接的表示であるがゆえに一部の消費者に誤解が生じている(←e)という点に
     ついては、今後も提供者側として、店頭、広告での商品説明の徹底を期す所存で
     あります。(←f)(引用おわり)
   (6)「全視界」の商標の下に「メガネ」「フレーム」などを結合して使用することは、
      商標上認められた使用である。たとえば、「明治チョコレート」、などという
      使われかたがある。
   (7)和真フレンドショップのメンバー店独自のチラシやホームページでの訴求について、
      説明にややわかりにくい表現があるが、これらに対しては注意をし、指導をしている
      ところである。
   (8)商標を広告に用いる場合に、それが商標である旨の表示を付さねばならないと
      する規定は商標法にはなく、その励行規定があるのみだが、弊社では、
      広告タイトルなど、各所で実行をしている。
   (9)全視界フレームについては、特定していないので、刻印はつけていない。
      販売店が限られているために他の商品と分類する必要もない。
   (10)全視界レンズには、自社とメーカーとの共同開発品なので商品を特定した
       商標をつけている。

      +++++++++++++++++

     では、これらについて、番号の順に私の意見を述べます。
   (1)は、ごもっとも、です。
   次に(2)ですが、私は、公開された商業広告と自分の体験をもとに、公共性があり
   公益を旨とする事柄について、事実および事実に基づく意見や質問を公開質問として
   掲げたにすぎないので、私の公開質問の中のどこに法律を侵す「おそれ」があるのか、
   まったくわかりません。その「おそれ」があるとのお考えであれば、どこにどういう違法性が
   あるのかをぜひ具体的にご指摘ご説明をいただきたいと思います。
   (この文も弁護士さんのお作りになった文かもしれませんね。こういう場合に「法に抵触
   する」と断言せずに「そのおそれがある」と書くのは、弁護士や行政官の決まり文句ですから)
   もしもそのご指摘とご説明があって、それに関して当方が納得できましたら、当方は貴殿に
   誠実に謝罪し、当方のホームページから当該部分を削除します。 

   それと、当方の予告どおり、当方からの公開質問と根岸社長様からの回答は、
   日本眼鏡技術研究会雑誌68号(2006年3月15日号)に既に掲載しました。
   それは既に同会の全会員に本年3月上旬に配布されております。
   (同研究会について詳しくは、http://www.ggm.jp/ngk/ をご覧ください)

   また、今回の貴殿からの書簡の要旨と、この私から貴殿への返答の書簡も同誌69号
   (本年7月発行)に掲載します。後者はまもなく当方のホームページにも公開しますが、
   貴殿から私への反論的な主張が書いてある貴殿からの書簡を非公開とする旨の要望を
   されることは、私には不可解です。

   次に、(3)(4)とを対照してみますと、枠に遠近両用レンズが入っていても、たとえば玉型
   リムの寸法が浅すぎるなどの理由で、中間から近くの見え方が改善されていないものを
   「全視界」と呼んで良いのかどうかが不明ですし、逆に遠近両用レンズが入っていなくて
   中近両用や単焦点が入っていてかマグネットパッド(Mパッド)のせいで中間から近くが
   見やすくなっているものを「全視界メガネ」と言えるのかどうかということも不明です。
   (単焦点でもMパッドによって手元が見やすくなることがあるのですが、それはどういう
   場合であるか、貴殿はおわかりでしょうか。その詳しいことは日眼研雑誌の69号に掲載
   します)

   この(3)と(4)は、はなはだ不備な定義であると言う他はありません。
   また、「どのフレームでもマグネットパッドをつけることで『全視界メガネ』になる」という
   記述はありましたが、「全視界フレーム」とは何かという定義は貴殿のお返事には
   見あたりませんでした。
   そこで、この(3)と(4)を私が組み合わせて、まぎれのない「定義」を作ってみましょう。
   「全視界メガネとは、枠に単焦点レンズ以外のレンズが入っていて、マグネットパッド
   (Mパッド)がついていることにより、それがついていない場合よりも中間部や近くが
   見やすくなるメガネを言い、そのメガネのフレームを全視界フレームと言う」

   そうすると、Mパッドがついていて、単焦点レンズ以外のレンズが入っていることが
   わかっているメガネであっても、何らかの理由によって、Mパッドを機能させても中間部
   から近くが見えやすくなっていない場合(枠のそり角が悪いとか前傾角が悪いとか、
   レンズの中心位置が適当でないとか、その他の理由により、そうなることはいくらでも
   あり得ます)には、それがはたして全視界メガネと呼んでよいものかどうかは、
   直ちには分からないことになります。そんな商標って、なんだか変ですね。

   ある商標がその商品に適用されるかどうかが、その商品を使う人の満足度(あるいは、
   その効能の多寡)によって決まる商標……、何とも不思議な商標ですね。

   また、たとえば、貴社とはまったく関係のない製造業者によって製造されたもの
   (枠のパッド以外の部分)が、その全体体積のうちの9割以上をしめる商品について、
   そこに自社の商標をかぶせるということも、こういう定義なら当然ながら多々あるわけで、
   むしろ、枠もパッドも貴社の製造販売による「全視界」フレームよりも、全体体積のごく
   一部に過ぎない部分においてのみ貴社の商品が使われている商品に対して貴社の
   保有する商標で呼ぶことの方が多いことになるのではないかと私は推察します。

   こういうのは、まことに珍しい、奇異とでも言うべき商標の使用方法だと言えるのでは
   ないでしょうか。

   たとえばABタイヤという性能の良いタイヤがあって、「ABタイヤが付いているせいで
   ハンドリングがたいへん良くなっている車をスーパーハンドル車と言い、
   その「スーパーハンドル」は当社の登録商標です。車のメーカーは特定しません」と
   いうようなことは、私は聞いたことがありません。

   そしてたとえば、「ズーランメガネ」というタイトルの宣伝があって、「当社特許のメガネ
   グローブ(登録商標)を腕の先につけると、どんなメガネでもずり落ちにくくなり、それを
   ズーランメガネと言います。『ズーラン』は当社の登録商標ですので、当社以外の業者は
   『ズーラン』という名称を用いて宣伝をしてはいけません」ということで、商品の本体にも、
   包装物にも「ズーラン」の表示はない、という話を聞いたら、おかしいと思いませんか?

   その場合にもしも「メガネグローブだけは販売できない。枠と一緒でなければメガネ
   グローブは販売できない。ただし、当社の枠でなくともよい」というのなら、
   よけいにおかしいですね。

   それから、その商標にかかわる商品(それは、その商品の本体や包装物にその商標の
   表示がある商品、と通常は同義)を有する商品に関しては、その商標の保持者が責任を
   持つのが通例であり、それでこそ、その商標に対する信用が生まれてくるのですが、
   たとえば、ユーザーがMパッドのついた枠が痛んだからということで、そのMパッドを
   近所のメガネ屋で別のメガネ(遠近両用レンズが入っている)につけかえたところ、
   中間部から近くの見え方は、前の「全視界メガネ」よりも劣っていたとします。
   しかし、それは貴社の定義によれば、やはり「全視界メガネ」になるのでしょうが、
   そういうものに貴社が責任をお感じになるのでしょうか。

   それと、もしも(4)の定義が正しいとするなら、たとえば、貴社のフレンドショップが、
   貴社とは無関係の枠にMパッドをつけたものを「全視界メガネ」としてホームページや
   チラシなどで宣伝したとしても、貴社としては「それは商標の使用方法に違法性がある」
   として排斥し得ないことになりますね。

   また、フレンドショップなどからMパッドのみを購入した業者が同様の宣伝をしたとしても、
   やはり同じ事が言えるわけですね。
   それと、貴社のMパッドがついた他社のAブランドの枠は、Mパッドがついたことにより、
   二つのブランド(商標)を持つことになるのでしょうか。
   それとも、MパッドがついたことによりAブランドが消滅するのでしょうか。

   たとえば、ほとんどの一眼レフカメラにはレンズ専門メーカーのレンズを付けることが
   できますが、AブランドのカメラボデーにBレンズをつけたとしても、あくまでもボデーはAです。
   B社は「Bレンズがついたカメラ全体をC(登録商標)と呼ぶ」などとは言いません。

   たとえばその交換レンズが他社にはない画期的なもので、広角14mmから望遠500mm
   までを1本でカバーするもので、しかもコンパクトなものだったとします。得意満面のその
   レンズメーカーがもしも「当社のそのレンズを付けた一眼レフ全体を『全焦点ズームカメラ』
   と呼び、『全焦点』は当社の登録商標ですので、他社はカメラ類に関してその商標単独の
   使用もダメだし、その商標を含んだ「全焦点ズ−ム」も「全焦点カメラ」も「全焦点ズーム
   レンズ」も「全焦点ズームカメラ」も、他社では宣伝等に使えません」と言ってさかんに
   「全焦点カメラ」の宣伝をしたら、そのレンズメーカーは世間からどう思われるでしょうか。

   それでいて、レンズに刻印されている名称は「全焦点」ではなく、別の登録商標が刻印
   されている……ということであれば、なおのこと消費者や同業他社は眼を白黒させるの
   ではないでしょうか。

   そして、その場合に、そのレンズメーカーが仮にカメラボデーも製造販売していても、
   レンズのみの購入ももちろんできるわけですが、Mパッドの場合はどうなのでしょう。

   「全視界」の広告を見て、あ、これはパッドにキーポイントがあるのだなと理解したユーザー
   が、Mパッドを取り扱っている店へ行って、ためしに自分の使っている遠近両用メガネの
   パッドをMパッドに付け替えてもらったところ、その枠は元々鼻幅が広い枠だったので、
   Mパッドの装用感も良いし非常に具合良く見える、ということがあったとすれば、Mパッド
   のみの購入も可能なのですね。(付け替え調整料が別にいるのかもしれませんが)
   あるいは、新品枠との抱き合わせでないとMパッドは購入できないのでしょうか。しかし、
   Mパッドがついていて中間部から近くが見えやすいメガネならすべて「全視界メガネ」になる
   との定義なのですし、お客様を第一にお考えになる貴社としては、Mパッドのみの購入も
   当然ながら許容されるのだと私は思います。なぜなら、ユーザーに遠近両用メガネを遠くも
   近くも見やすく使ってもらいたいというのが貴社の願いに相違ないのですから。

   そうであれば、そのことについても広告の中に書いておかれるのがよいと思います。
   もちろん「鼻幅が狭めの枠の場合にはMパッドは適しないので、よほど鼻根の狭いかた
   でない限り、なるべく鼻幅が21ミリ以上ある枠にMパッドを付けられることをお勧めします」
   というような注意書きも添えておくのは良いことだと思います。

   どうですか。私がここまで申し上げても、貴殿はまだ「自社製造の商品に限定しない商標
   というのは、やはりおかしいな」とお考えになりませんでしょうか。
   そして「商品にそれを明示してこその商標である」と思われませんか。 

   次に、今回の論議における、もう一つの核心である(5)に移ります。

   (5)の(a)は、そのとおりですが、(b)(c)はどうでしょうか。
   この(b)の文自体、筋の通らないおかしな日本語であり、これは「商標は自他商品を識別
   するものであることが本来望ましいのであるが、そこに間接的な効能表示を加えると識別と
   効能表示の2つの効果を有することになり、より望ましいものになる」と書けば筋の通った
   文章となります。
   日本語として形式的にはそれでよいとしても、その内容には私は同意できません。 
   特定分野の製造物につける商標の本来の目的機能は、他の商品との識別です。
   それにより企業は自社商品の信用を維持することも高めていくこともでき、誇りと責任感を
   持ってその商品を作ることができるのだし、場合によっては責任を問われることにもなる
   わけです。
   商標によってその商品の効能を間接表示するのが望ましいなどということが、商標法の
   そもそもの立法の精神として存在するわけがありません。もしそうであるならば、
   効能を直接に示す名称が商標として拒絶されるはずがないのです。

   たとえば、マカロニの商標として「うまい」を申請したら、当然ながら拒絶されます。
   「ウマイ」もダメ。「オ!ウマイ」もダメだし、「オ・ウマイ」でもだめでしょう。
   「オウマイ」ならどうだかわかりませんが、「オーマイ」ならOKなわけで、それははるか
   昔に認可され使用されています。
   その理由は「オーマイ」なら「ウマイ」を連想しにくいからでしょう。

   我が国には、ホンダ、ヤマハ、マツダ、日立、東芝、ソニー、キヤノン、NEC、明治、森永、
   などなど、効能の間接表示などとはまったく無関係の商標が無数にあり、そのなかには、
   もちろん立派で親しまれている商標も多々あるのですが、それらは、効能を間接的にさえ
   表示していないから望ましさは不足している……のでしょうか?

   効能を間接表示できる商標が望ましいと貴殿はおっしゃいますが、それは立法者や消費者
   の論理ではなく、売る側の論理なのであり、それにより効能を明示せず暗示して
   (明示すると、その通りの効能がないと責任を追及されかねない)売上げ増をねらう製造
   業者あるいは販売業者の便益から来る望ましさにすぎません。

   たとえば、頭が重いのでハッキリという名の頭痛薬を飲んだのに、頭の重さが治まらなければ、
   その商品の購入者は「全然頭がハッキリなんかしないじゃないか」と恨みがましい気持ちに
   なるでしょうし、「通勤快足」なる靴下で通勤しても水虫のむずがゆさから解放されなければ、
   「だまされた」と思うでしょう。

   「全視界メガネ」をかけても側方がはっきりしないと感じた人は「全視界がはっきりするわけ
   でもないのに、全視界という名前はおかしい」と落胆したり、憤りを感じたりすることでしょう。
   そんな商標、すなわち、商品の効能を間接表示する商標が、本当に消費者にとって望ましい
   商標なのでしょうか。

   商標は、効能とは無関係な方が消費者に対してはフェアーなのだ、とは思われませんか。

   効能を直接ではなく間接的に示す名前ならば我が国の特許庁により登録認可される、
   という既成事実を利用して、そういう名前を商標として登録し使用するのは、もちろん
   違法ではないのですが、それは一種の脱法行為ではないのか、と私は思います。
   そして、Mパッドのついた遠近両用メガネを「全視界メガネ」として表示するのは、
   まことに巧妙な脱法行為ではないかと私は思うのです。

   なぜなら、その種の「効能暗示型」の商標は非常に多いですから、一般の消費者は、
   その間接的に表示された効能をその商品が持つのだと思ってしまうわけだし、事実その
   効能を持っている商品も多いわでです。

   「全視界」が商標であると知っても、商標は効能とは無関係なもの、ということを知らない
   人も多いし、あるいは、「全視界」が商標であるとは知らずに、その効能を端的に表す
   形容詞的なキャッチフレーズだと思って、そのメガネの特長を推察する消費者も多いでしょう。

   ところがこの場合、その商品でフレーム内の「全視界」を明視できるわけではありません。
   それなのに、そういう性能を持つかのような商標を用いておられるという点に、私は大いに
   疑問を持ちます。
   少し前に当店に来られた中年男性が誤解しておられたということは初めの質問の中で
   書きましたが、当店以外のメガネ屋さんからも、「視界の全部がはっきり見えるという
   誤解をした人からの問い合わせがある」という声を聞きます。(もしご希望でしたら、その
   メガネ屋さんの実名を挙げてもいいです)
   同業者にとっても「全視界」の商標を用いた遠近両用メガネの宣伝は迷惑な話なのです。

   もしも、貴社の人がユーザーから「全視界メガネって言うけど、横を見たらぼけるじゃない
   か」と言われたら、次のように釈明をなさるのでしょうか。
   「いえ、全視界というのは商標でして、これは効能を表すものではありません。
   効能を表すものは商標としては登録されないのです。ですから、このメガネで視界の
   全部がはっきり見えるということがなくとも、この商標の使い方には違法性はまったく
   ございません」

   ユーザー「???」

   しかし、この説明は、今回の貴殿の(5)の説明とは矛盾しているのではないでしょうか。
   「全視界」はその商標にかかわる商品の効能を間接的に表示するものなのか、それとも、
   効能とは無関係なものなのか、いったい、どちらなのでしょうか。

   建前としては「効能とは無関係」。しかし、実際には効能を暗示する意図を持っている
   商標であり、その意図のように商品の効能を理解する消費者も多い。ところが実は、
   全視界を明視できるわけではないから、その名称から推察する効能をその商品が
   持つわけではない。
   「全視界メガネ」という、商標に普通名詞をくっつけた名称での当該商品を宣伝は、
   こういう3重構造の、ある種トリッキーとも言うべき商標の使い方による宣伝ではないかと、
   私は言いたいです。

   効能を明示するのではなく暗示するのなら、それは違法ではなく脱法的な商標だと思います。
   たしかに、脱法行為は違法ではないので法的な処罰の対象にはなりませんが、
   倫理的にほめられた行為ではないし、ましてや元来そういう効能を持たないのにかかわらず、
   お客さまから誤解されやすい名前をあえて商標として用いる企業が他ならぬ貴社であるとい
   うことに、私は深い悲しみを覚えざるをえません。

   業界で、商道徳をわきまえた模範的な企業、かつては眼鏡学校を運営して多くの優れた
   人材を世に送り出した企業としての声望も高い、他の量販店とは技術レベルが一段も
   二段も違うと評判の貴社が、こういう商標をこのような使い方で使われることには、
   私は失望ととまどいを禁じ得ません。

   最近貴社の新宿レディース館でメガネを買ったある中年女性は、「ファッションアドバイスを
   してくれた販売員の女性からは押しつけがましい販売姿勢も単価アップの意図も感じられず、
   その女性は何とかして顧客にステキなメガネをかけてもらいたいという気持ちでマジメに
   真剣に相手をしてくれた。たいへん感じのよい店でした」という感想を私に述べられました。

   貴社にはそういう純粋でまじめな社員が多いようですが、そういう社員が誇りを持って働
   ける会社であるためには、宣伝方法に関しても、もう一度検討されるのがよいのではないか
   と私は思うのです。

   首都の中でもひときわ高いプレステージを持つ銀座という土地に本店を持つメガネ店といえば、
   我が国を代表するメガネ店だとも言えます。業界の顔だと言ってもさしつかえないでしょう。

   ですから業界全体に対するイメージという観点からしても、ここはぜひ貴社の「全視界」の
   宣伝方法について、再検討をお願いしたいのです。
 
   このたび私から質問されるまで、貴社では、すでに自社の宣伝でさかんに使っておられた
   「全視界メガネ」「全視界フレーム」とは何を指すのか、ということが定かではなかったようです。
   質問をお送りしてから約2ヶ月ののちに、そのお答らしきものをいただいたのですが、
   依然として整合性のある定義は、貴社からはいただけませんでした……。
   なんということでしょう。

   商品に商標の表示をするという当たり前のことをしておれば、こういうおかしなことにはなら
   なかったのではないでしょうか。
   もしも、もしもですよ……貴社が本当に老視者が遠くでも近くでも全視界がはっきり見える
   という、まさに革命的な老視者用のメガネ(レンズ)を開発されたのなら、その場合には、
   脱法行為とも言うべき、効能を間接的に表示するところの「全視界」という商標を登録され、
   使用されても、私はまったく異をとなえません。

   しかし、そうではないからこそ、すなわち、実際にそういう効能がないのに、そういう効能が
   あるかのごとき印象を与える商標であるところの「全視界」を使われることに、私は疑問を
   投げかけずにはおれないのです。

   私からの前回の質問で、以前に他の眼鏡店の宣伝で「全視界メガネ」が使われていたが
   それについて貴社はご存じなのかどうかということをお尋ねしましたが、今回の貴殿からの
   回答の中にはそれに関するお答えはありませんでした。

   あちらの「全視界メガネ」は、ひところ関東地方の新聞に大きく宣伝されていましたから、
   貴社がご存じなかったということは考えにくいですし、もしご存じでなかったのなら、
   「知らなかった」とお答えがあったと思います。
   ですから、貴社の商標「全視界」はあの広告の中の語句をそのまま拝借したものである
   蓋然性が高いと言われてもしかたがないでしょう。
   そして、初めに「全視界メガネ」という名称で広告をした眼鏡店は、その名称を商標によって
   独占しようとはしませんでしたが、そのあとで「全視界」を使っておられる貴社は、それを
   商標としての独占使用を(直接に他社に対して明言せずとも)宣言しておられるわけです。

   他社で機能明示的に何度も広く広告宣伝に使用された語句を、そのあとで別の会社が
   自社の商標として申請し登録認可された商標があったとして、そういう事実を特許庁が知り、
   その無効を訴える訴訟もあれば、商標としては取り消しになる「おそれ」もあるのではないか
   と私は考えます。

   そして、そういう商標を、商品(枠)に刻印もせずに変則的な使い方をしておられるという
   ことについては、業界の模範生である貴社としては、忸怩たる思いがおありなのではな
   いかと、失礼ながら私は忖度いたします。

   (5)の(d)は、やはりおかしいです。こういう「違法ではない」云々の文章はおそらく
   弁護士さんが書いたものだと私は推測します。弁護士さんは法的に問題があるかどうか
   という観点でしかものごとを見ずに、商道徳や企業倫理の点までは言及しませんから、
   こういう文になるのでしょうね。
   もう一度言います。何度でも言います。

   商品の効能を表すかのような商標をある商品に対して用いるのは、一種の脱法行為だと
   思うのですが、その効能をその商品が確かに持っているのならば、特に批判されるような
   ものではないでしょう。しかし、そうではなくて、効能の暗示を目的としてその商標を用い
   ながら、その商品にその暗示された効能(この場合は、「全視界を明視できる」)がない
   というのであれば、それは批判されるべき脱法行為だ言えるのではないでしょうか。

   そういう商標の使用は、違法ではないけれど、消費者の信頼を第一に考える企業のする
   ことではないとは思われませんか。

   (5)の(e)は、やはりおかしいです。「間接的な効能表示だから」ではなく、当該商品では
   全視界を明視できるわけではないから「全視界メガネ」という名称は誤解を呼んでいる……
   と私は言っているのです。

   (5)の(f)については、どういう説明をなされるおつもりなのかはわかりませんが、
   単にMパッドの原理や効果を説くだけでは不充分です。
   「全視界」という名前を宣伝に使う限りにおいては、下記の3点をはっきりと言わなければ
   (書かなければ)消費者の誤解はとけないでしょう。
   1.「全視界」はあくまで商標であって、効能を表示する名称ではない。
   2.すなわち、遠くを見るときでも、近くを見るときでも、そのメガネ(枠)の中の視界に
     入るすべてのものがはっきりと見えるというものではない。
     たとえば、下目使いで階段を降りるときなどでも、まったくぼやけないということではないし、
     上目使いに近距離のものを見てもはっきり見やすいということでもない。

   3.遠方視の場合でも、近方視の場合でも、側方の視界は、正面の視界に比べて、鮮明さが劣る。

   なお、余談ですが、薬品の広告には必ず「使用説明書をよく読んで云々」の添え書きがあります。
   商標を第一種(効能を連想させないもの)と第二種(効能を連想させるもの)に分けて
  、第二種の場合には宣伝文や商品のパッケージなどに次のどちらかの文言を添えて書かねば
   ならない、というふうに商標法を改正するのもいいのではないかと私は思っています。
      A「この商品は、商標から連想される効能を持つとは限りません」
      B「この商品は、商標から連想される効能を持っています」
   私が考案し商品化した「そのまんまメガネ」はBの方の商標を持つ商品だと思いますが、
   「全視界」の場合もBなのでしょうか。


   次に(6)に移ります。
   (6)もそのとおりですが、私は初めから貴社に対して何らかの違法行為があるのではないか
   という疑問は一切呈していませんから、この種の「これは違法ではない」という釈明(反論)は
   無意味だと言うべきでしょう。
   私は「遠近両用メガネ」の言葉から連想され理解される「全視界メガネ」という表現に、
   誤解を招く要素が大きいと申し上げたのですが。
   さらに言えば、「明治チョコレート」は、「全視界メガネ」でもおかしくないとすることを示す例
   としてはふさわしいものではないと思います。
 
   たとえば、社名と商標を兼ねた名称の次には「森永キャラメル」とか「三菱エアコン」などという
   ように、その商品の種類を示す一般名詞が来ることは多いのですが、製造企業のシリーズ
   商品に関しては「画王テレビ」「霧ヶ峰エアコン」「アクオステレビ」「イクシーカメラ」「ソアラス
   ポーツカー」等とは、メーカー自身は宣伝においてめったに言いませんね。
   「ナショナルカラーテレビ・画王」「三菱エアコン霧ヶ峰」「シャープ液晶テレビ・アクオス」
   「キヤノンのデジカメ・イクシー」「トヨタのスポーツカー・ソアラ」などとして宣伝されるのが
   通常です。
   その意味においても「全視界メガネ」「全視界フレーム」という宣伝は変則的です。
   「和真のメガネ・全視界」なら、少なくとも商標の利用の形式としては、納得できますが。
 
   (7)については、次のように申し上げましょう。
   貴殿の『全視界メガネ』に関する定義からすれば、「どこの枠でも、Mパッドをつけたものを
   『全視界メガネ』と宣伝してもよい。そして『全視界』はあくまで商標であって、
   メガネの効能を示すものではないと説明しなさい」という指導になるはずですが、
   貴社ではそのような指導をなさっているのでしょうか。

   (8)に関しては、それを実行したところで、商標は機能とは基本的に関係がないと知って
   いる一般人はごく一部なので、それが商標であることを示すマークをつけたとしても、
   その措置だけで、私がこれまで述べてきた「全視界」に関する誤解を防ぐのは難しく、
   その表示は単に同業者に、メガネ関係では「全視界」という名の商品は作ってはだめですよ、
   と警告を発する効果しか見込まれないでしょう。

   (9)については、「では、Mパッド販売店が組み立てたのではないMパッド付きのメガネは
   どうなのですか」とお尋ねしておきましょう。

   (10)については、繰り返しになりますが、「そのレンズが全視界を明視できるものなら、
   私は文句は言いません」と言っておきます。

   最後に私は貴社に提言をします。
   老視者が本当に全視界をどの距離でもどの方向でも明視できる夢のメガネレンズの
   実用化を研究してみられたらいかがですか。貴社ならそれが可能かもしれません。

   そして、それができるまで「全視界」は封印しておかれたらどうでしょうか。

                                                早々
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   追加します(2006.3.30)

   貴社の広告などにおける「全視界メガネ」という表示は 景表法における「優良誤認」の(1)に
   相当するおそれのある 表示ではないかと私は考えます。 遠方と近方とを明瞭に見える
   メガネのことを表示する一般名詞である 「遠近両用メガネ」という名称がすでに広く周知
   されている条件下では、 「全視界メガネ」という語彙を見ると、 「全視界」は「メガネ」の効
   能を表す語彙であると受け取られ、 全視界が明瞭に見えるメガネという 誤認を生みやす
   いのは明かですから。
 ++++++++++++++++++++
   (景表法の一部)    
   2  不当表示とは        
     不当表示とは、「一般消費者に誤認されることによって不当に顧客を誘引し、
     公正な競争を阻 害するおそれがあると認められる表示」をいいます。    

   3  不当表示の禁止    不当表示として禁止されるのは、次のような表示です。    
     優良誤認   (第4条第1号)      
     品質、規格、その他の内容についての不当表示  
     (1)  商品又は役務の品質、規格その他の内容について実際のものより著しく
         優良であると一般消費者に誤認される表示

     (2)  競争事業者の供給する商品又は役務の内容よりも自己の供給するものが
         著しく優良であ ると誤認される表示