メガネスーパー、広告担当者様
平成15年11月26日
眼鏡公正広告協会 会長 堀田好孝
http://www.ggm.jp/gkkk/
貴社ますますご清祥のことと存じます。
貴社は最近チラシ広告にて二重価格の撤廃を宣言なさいました。
たとえば、今年7月18日に大阪地区に入ったチラシには《メガネスーパーの広告か
ら二重価格表示が消えます。
割引の幅がわかりにくくなりますが、お買得は今まで以上!ブランド、品質、技術、
サービスに裏付けされた「ズバリ一本価格」でご提供します》としてありましたが、
私どもはこの宣言を評価いたしました。
ところが、貴社のチラシで最近山形県下に入ったもの(有効期限、平成15年12月
4日)においては、「スーパー価格」という価格を示して、それから安くして○○円
に、という表示がなされています。
1.二重価格表示に関しては、前言を撤回して、方針の変更をなさったのでしょうか。
2.この場合の比較対象価格である「スーパー価格」というのはどういう価格なのでしょうか。
「自店平常価格」の意味なのでしょうか。
3.まず下記の規約を読んでいただき、それから次の質問にお答いただきたく思います。
眼鏡公正取引規約からの抜粋
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第8条(二重価格表示等)
販売業者は、眼鏡類を一般消費者に販売するに当たり、自己の販売価格(以下「自店
販売価格」という。)に当該販売価格よりも高い他の価格(以下「比較対照価格」と
いう。)を併記して表示する場合(比較対照価格と自店販売価格の差を割引率又は割
引額で表示する場合を含む。以下このような表示を「二重価格表示」という。)に
は、次に掲げる表示をしてはならない。
(1)
比較対照価格として施行規則で定めるところの、自店平常価格、希望小売価
格、参考小売価格又は市価とはいえない価格を、比較対照価格に用いること。
(2)
実在する自店平常価格、希望小売価格、参考小売価格又は市価よりも高い価格
を比較対照価格に用いること。
(3)
割引率又は割引額の算出の基礎となる価格や割引率又は割引額の内容等につい
て実際と異なる表示又はあいまいな表示を行うこと。
(4)
割引率又は割引額の適用対象となる商品が一部のものに限定されているにもか
かわらず、その旨を明示しないで、販売業者の取り扱う全商品又は特定の商品群を対
象とした一括的な割引率又は割引額を強調した表示を行うこと。
施行規則24条
規約第8条各号に規定する用語は次によるものです。
(1)
「自店平常価格」とは、当該眼鏡類を実際に販売しようとする価格をいう。
施行規則第25条
比較対照価格として用いる価格については、自店平常価格等でそれ自体は根拠のある
価格であっても、比較対照価格についてあいまいな表示を行う場合には、一般消費者
に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがあるので、比較対照
価格がどのような内容の価格であるかを正確に表示する必要がある。
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3−1 公取の見解によれば、「自店平常価格」というのは、自店において実際にそ
の価格で相当な期間に渡って販売したという実績を求められるものなのですが(それ
は当然でしょう。相当の期間の販売実績が不要なのであれば、たいへん高い価格をつ
けて店頭にしばらく列べておくだけで「自店平常価格」としてしまえるわけですか
ら)、今回のチラシに掲載のそれぞれの「スーパー価格」は、実際に貴社の店頭でど
れくらいの期間に渡って、どれくらいの地域において、どれくらいのセット数の販売
実績を持つ価格なのでしょうか。
3−2 もしもそれに関して明確にされないのであれば、「スーパー価格」として比
較対象価格を挙げてそこからの割引をうたうのは公正さに欠けると私は考えるのです
が、いかがでしょうか。
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この質問は公開質問とし、私どもの協会のホームページに掲載します。
ご回答をいただきましたならば、それも合わせて掲載します。
メガネスーパーさんからの反応と本会からの返事
上記のメガネスーパーへの質問書は、業界誌『プライベートアイズ』2004.2
月号に、本会顧問の岡本氏の連載「かみつきおやじ」のエッセイとして企業名を伏せ
て掲載した。
すると、2004.2.7にメガネスーパーさんから当方に内容証明郵便による通知書が届いた。
その要旨は、「あの質問書は悪質ないやがらせである。ホームページに掲載のもの
を削除し、業界誌の月刊3誌に謝罪広告を掲載せよ。さもなくば法的手段を取る」と
いうものであった。それで当方は、その2日後の9日に下記のような返書を送った。
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(株)メガネスーパー 人事総務部長 富永巽様
平成16年2月9日
眼鏡公正広告協会 会長 堀田好孝
http://www.ggm.jp/gkkk/
貴社ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
このたび、平成16年2月5日付けの貴殿からの通知書(これを以下では単に「通
知書」とします)をいただきました。
要旨は「当会から貴社への公開質問書を眼鏡公正広告協会のホームページから削除
し、業界誌3誌に謝罪文を掲載せよ。それをしなければ法的手段を執る」とのことで
すが、それを拝読して、当方が疑問に感じましたことなどをお尋ねするとともに、多
少の提案をいたします。
1.通知書において貴殿は会長である私の住所が不明であったことを批判しておら
れましたが、当会はネットで活動しておりまして、当会に対するご意見やご批判など
もすべてメールでいただくようにいたしておりますので、会長の現住所や電話番号な
どを掲示する必要を認めておりません。ホームページアドレスとメールアドレスが当
会の住所であります。たとえば日本眼鏡技術者協会のホームページに会長の住所が
載っているでしょうか?
2.また、当会ホームページには岡本隆博顧問の名を出しておりますが、岡本氏は
業界では著名な人物で、その店の所在地も周知のものですので、郵便で届けたいもの
があれば岡本顧問宛に届けられればすむことです。
また、この業界において価格表示などの問題に携わっている眼鏡公正取引協議会の
ホームページには、意見を寄せるメールボックスすらありません(2004.2.1現
在)。それに比べて当会ははるかに公正であると思われませんか?
3.平成16年2月3日の朝に本会の岡本顧問の店に、自分の名を名乗らない人物
から「堀田会長の住所を尋ねる」電話がありました。名を尋ねても名乗らないので、
岡本顧問は私の住所を教えなかったそうですが、その電話は貴殿ご自身または貴殿の
関知する人物からのものだったのでしょうか。もし、そうであった
のなら、なぜ名乗られなかったのかをお聞かせ願えれば幸いです。
4.当会から貴社に質問書を出した場合には、かならず返答を待つ旨を記し、いた
だいた返答は質問書とともに公表する旨も述べています。チラシという公開資料に対
して、返答をいただけるようにして公開で質問をしたのです。それでも「同業者に対
する悪質ないやがらせ」だとおっしゃるのですか。
5.また、当会のホームページを見ればわかるように公開質問書は貴社だけでなく
多くの企業に出されています。2004年2月7日現在で貴社を入れて17社あての
質問書が掲載されています。これは公益に鑑みる精神からのものであり、貴社だけに
何らかの意趣を含んだものではないことは明かでありますが、貴殿はそう思われませ
んでしょうか。
6.ある大手眼鏡チェーン店さんは、以前に本会岡本顧問からの質問書を受けて、
それから業界における大手企業の社会的責任に鑑みて、全国紙に全面広告を出され
「今後不透明な二重価格はやめる」旨を宣言されました。その態度を貴殿はどう思われますか。
7.通知書において貴殿は、プライベートアイズ2月号への掲載について公平な取
材が必要とおっしゃっていますが、それは出版社に言うべきことでしょう。なぜ出版
社にその旨を抗議なさらないのですか。
8.通知書によると、貴社は公正取引委員会などと密接に連絡をとりながら広告宣
伝を展開しておられるとのことですが、いま問題としていますチラシ広告における、
「スーパー価格」を比較対象価格として示してそこから安くするという二重価格表示
に関して、公正取引委員会は何とおっしゃっているのでしょうか。
【措置1】 下記の資料を私どもから公正取引委員会へ送ります。
(1)今回貴社が問題にしておられる、私どもから貴社への公開質問書のコピー
(2)月刊『プライベートアイズ』に掲載された当該記事のコピー (おそらく出
版社から当該雑誌が公正取引委員会へ資料として送られると思います)
(3)今回の件に関する貴社チラシのコピー
(4)過去における当会岡本顧問と貴社との質問書関係の資料
(5)貴社から今回来た通知書の要旨
(6)この書簡
9.今回貴殿が問題にしておられる当方からの質問書にはウソは全く書いていなく
て、しかも、公益に反することもまったく書いていませんし、逆に、消費者にとって
有益なことが書いてあると当方は確信しています。もちろんこれにはまったく違法性
などあり得ません。
それなのに、なぜ貴社は法的手段をとるとおっしゃるのでしょうか。当方の行為が
何法の第何条に、なぜ抵触するのでしょうか。貴社の顧問弁護士のかたが違法である
とおっしゃっているのですか。
もし、そうであれば、違法であることの理由を分かりやすくお聞かせいただければ幸いです。
10.道義的にも法的にも何ら落ち度がない我々の行為に対して、何ごとかの要求
をなし、それに応じなければ法的手段をとるとするのは、刑法上の脅迫罪あるいは強
要罪となり得ると私は思うのですが、貴殿はどう思われますでしょうか。
(参考)
「刑法222条は脅迫罪を定めている。「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を
加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処す
る」とある。ここにいう告知する内容としての「害」はそれ自体犯罪を構成するよう
なものであることを要しないとするのが通説、判例。即ち「上司に通報する」とか
「告訴する」等の告知も相手を畏怖させるためならば脅迫罪になる(前田雅英・刑法
各論講義2版(東大出版会1995)90)。更に脅迫により「人に義務のないことを行わせ」
ることは強要罪に該当する(刑223条)。」
(http://www-user.interq.or.jp/~hedo/vca10.htmより抜粋)。
11.訴訟をなさるとすれば、その相手は当協会の両名だけになさるのでしょう
か。それとも近代光学出版社も訴訟の対象になさるのでしょうか。もし、出版社は訴
えないということであれば、その理由をお聞かせいただければ幸いです。
12.貴社からの通知書を全面そのままで、本会のホームページ、一般マスコミ、
消費者団体などに公表をさせていただいてよろしいでしょうか。(もちろん、そのあ
とにはこの返書もつけますが)
貴社において今回の通知書に関してなんらやましい点がないのであれば、公表して
もよいのではありませんか。
もし、それを拒否なさるのであれば、公表を目的としたものではないこと、著作権
のこと、それ以外に拒否なさる理由があればぜひお聞かせください。
【措置2】 なお、当然のことですが、この当方から貴社への書簡は、著作権が当
方にありますので、公正取引委員会もふくめて、プライベートアイズなど、どこへ通
知公表転載するのも当方の自由であることを、申し上げておきます。
13.当方のホームページでの、今回の件の貴社への質問書の掲出は昨年11月末
になされました。質問書をお送りしたときに予めホームページに掲載する旨も申し上
げていますから、あの記事を、その掲載当初から貴殿はご存じのはずです。ではなぜ
2ヶ月以上も抗議もせずに放置しておかれたのでしょうか。悪質ないやがらせだと思
われるのなら、なぜ、当該ホームページのメール受付に対して抗議のメールを送った
り、第三者に知らせたりなさらなかったのでしょうか。
14.通知書は人事部長の名で来ましたが、なぜ社長名で来なかったのでしょうか。
このたびの通知書に関して富永さんより上のかたはまったく関知せずに責任もと
られないのですか。貴社の社長さんは今回の件について何とおっしゃっているので
しょうか。
15.当方を相手どって訴訟を起こされる場合に、会社として社長名で起こされる
のですか。それとも富永さん個人が起こすのですか。もし、前者なのであれば、なぜ
今回の通知書が富永さんの名前で来たのでしょうか。
16.企業は、大きくなればなるほど、営業内容や広告宣伝の内容において疑義を
申し立てられる余地のない公正なものとする社会的責任があると思われませんでしょうか。
【実行猶予】
上記の【措置1】と【措置2】は、2月21日まで実行を猶予します。
2月21日までに当方に、下記の(1)と(2)と(3)のすべての内容を書いた
第二の通知書を貴社の「社長名」で内容証明郵便が届きましたならば、措置1と措置
2については、ひとまず中止し、かつ、可及的すみやかに当方のホームページに掲出
してある貴社への公開質問を、トップページから外し、サブページに移します。
(1) 「2月5日付けの貴社からの内容証明郵便による通知書については、
その全ての内容を白紙撤回することにする」旨の意思の表明。
(2) 今後貴社のチラシ広告において、関係諸法や眼鏡公正取引規約などに照
らして疑義が濃厚な二重価格表示を行なわないことにするという意思の表明。
(他の大手眼鏡店さんはほとんどそれに踏み切っておられます)
(3) 刑法上の脅迫罪を構成し得る文書を当方に送付されたことに関する謝罪の意思の表明。
ただし、本件にかかわる公開質問書およびこの書簡をば日本眼鏡技術研究会雑誌へ
掲載することにつきましては、事情のいかんを問わず、同誌の編集を担当しておりま
す当会岡本顧問が「会員の活動」として紹介するために実施いたします。(当会は日
本眼鏡技術研究会とはまったく別組織ではありますが、私も岡本顧問も日本眼鏡技術
研究会の会員ですので、研究会の会誌に「会員の活動」として紹介することがあるわけです)
なお、貴殿から第二の通知書が来まして、それを日本眼鏡技術研究会に紹介する場合は、
その要旨をごく簡単に述べるにとどめます。
【削除措置1】 業界月刊誌3誌に下記の文言を含んだ広告を掲載されましたら、
サブページに移した貴社あての公開質問書も当会ホームページから削除します。
「メガネスーパー(あるいは、当社)は業界全体に対する信用という観点から、今後、
広告宣伝において、その根拠を尋ねられて回答ができないような不明確な二重価格表示は行ないません」
【削除措置2】 先般ある大手チェーン店さんがなさったように、主要全国紙
(朝日、読売、産経、毎日、日経)に全面広告を出し、その中で、今後は不透明な二重価
格はやめますと宣言をなされば、当会ホームページにおける貴社あてのもう一つの公
開質問書も削除します。それで貴社あての質問書は当会ホームページからは、ひとま
ずなくなることになります。
上記2つの削除措置については、期限は特に設けませんが、実行なさるのでしたら
早めの方がよろしいかと思います。
最後に付け加えますと、私からの今回の貴社への提案に対して貴社がどう応じられ
るかということにより、貴社が名実共に一流企業と言える会社かどうかということが
分かるのではないかと、私は思っております。
では、お返事をお待ちしております。
その後のこと
当方が限った期限内はもちろんのこと、それ以後もスーパーからは返事は来ない。
このことがあって、1ヶ月近くたって千葉県の新聞に入ったメガネスーパーのチラシを見てみた。
(広告有効期限:平成16年3月18日)
すると、メガネの写真を入れてその価格表示をしてあるものが10数個あるのだが、
そのうちの4つが2重価格であり、比較対象価格は、例の「スーパー価格」である。
なんか、未練がましい感じである。もちろんだが、比較対象にした「スーパー価格」というのは
どういう価格なのかという説明はなく、単に「スーパー価格は毎日が超お買得!」としてあるだけである。
それで本会の岡本顧問は「ああいうことがあっても改善の兆候がない」と判断して、
富永氏への返書で予告した資料を、公正取引委員会へ送った。
その後、4月14日に公正取引委員会の山田さんと名乗る女性から電話があった。
もう少し詳しく聞かせてほしいとのこと。
それで岡本顧問はいろいろ説明して、最後に、「眼鏡業界では大手はみなチラシで
の二重価格をやめているのにメガネスーパーだけがこの状態です。我々では力が及ば
ないのでそちらでよろしくお願いします。スーパーさんにそちらから『スーパー価格
とは何か」と聞きただしていただけませんか」と言った。
そしたら「検討してみます」とのことだった。
○
6月になって、大阪府下のメガネスーパーのある支店の店内にあったチラシを見たら、
「スーパー価格」も二重価格表示も消えていた。
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