テーシーケース(株)様
平成15年5月19日 眼鏡公正広告協会 会長 堀田好孝
前略
私どもは、眼鏡とその関連分野における広告に関して、ユーザー保護の立場から、
それが公正なものであることを願って活動している団体です。
貴社の商品「メガネコードe−ion」につきお尋ねいたします。
業界誌(たとえば、月刊「眼鏡」2003.5)や貴社のホームページでの当該商
品の広告において、次の5つの効果を書いておられます。
「体内活性化」「血液さらさら」「集中力UP」「ストレス緩和」「イオンバランス調整」
これらに関して治験データがあるのでしょうか。
なお、ご承知だと思いますが、参考までに申し上げておきますと、治験において
は、単に当該商品を試験的に何人(あるいは、何十人)かに使用させてその結果の身
体データや自覚的感想を採るだけでは不十分です。なぜなら、暗示効果があるからで
す。正確な治験は、二重盲験法を用いることにより可能となります。
治験においては、本物と、本物によく似たプラセボ(偽物)との両方を何十人かの
人に与えて試しに使ってもらうのですが、その場合に、与える方も受け取る方も、そ
れが本物か偽物かがわからない状態で行ない、その結果を比較して有意な差があるの
かどうかを見るのが二重盲検法です。
これこれこういう理由で理論的には効果が有るはず、というだけでは、効果がある
とは言えません。
また、実際にそれを使ってストレスが少なくなった人が何人かいるというだけで、
それによる効果だとは断定できません。暗示効果の介在があり得るし、たまたまスト
レスが減る時期にそれを使ったのかもしれないからです。 当該商品に関する、確か
な治験データがあるのでしたら、ぜひご紹介をいただきたいのです。それによる裏付
けがあるものなら、我々もユーザーに対して推奨していきたいと思いますので。
*こういう原理で効果があるはず、という説明を求めているのではありませんので
誤解なきようにお願いいたします。
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なお、この質問は私どものホームページに掲載いたします。
お返事をいただきましたら、それも掲載いたします。


2003.5.28に、TCケースさんから、eイオン加工に関するデータを
お送りいただきました。
ありがとうございました。
よく検討いたしまして、また意見なり質問なりを提出させていただきたいと
思います。
TCケース様
平成15年6月2日 眼鏡公正広告協会
堀田 好孝
貴社ますますご清栄のことと存じます。
先般貴社よりお示しいただきました治験データについて、コメントと提言をさせてい
ただきます。
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「MICA活性化ドロップが人間の呼吸循環系機能に及ぼす影響」
これについては、治験の方法についての具体的な記述がないので、これにより、eイ
オンのメガネコードが身体に与える影響を云々することはできません。
「MICA加工枕が脳の活性化の及ぼす効果」
1.実験用の枕を与える側が、本物かプラセボかを分からない状態で与えているのか
どうかということ、及び、枕を与えられる方が、どのように言われて与えられたのか
ということが不明です。
2.実験開始後1カ月経過したころから、本物の枕を与えられた方のグループにアル
ファ波の脳波が多くなっていることはたしかですが、アルファ波は誰でも安静にして
いればよく出てくるものであり、このことが「脳の活性化」「ストレス解消」と、ど
う関連するのかが不明です。
3.メガネコードのMICA加工をしたものと、枕にMICAC加工したものとの関連性も不明です。
「生体の生理心理から見た電磁波エネルギーに対するMICA加工製品の効果」
1.これも、実験用着用物(具体的に何であるかは不明、エプロンのようなものかど
うか、わからない)を与える方のブラインド状態については記載がありません。
2.このパソコン作業実験により、実験開始後2カ月を経過するころから、MICA
製品使用群において、プラセボ使用群に比較しての視機能の低下の抑制が見られるこ
とはたしかですが、この結果が、MICA加工をしたeイオンメガネコードの使用に
よる、体内活性などの種々の効果につながるのかどうかは不明です。
「マグカップでの試験」
1.ブラインドテストがなされているのかどうかが、この報告書からは、不明です。
2.mica加工のマグカップで水を飲むと呼気中のマイナスイオンが増えたという
ことですが、マイナスイオン(マイナスの電気を帯びた小さな水滴)を吸うと健康に
よいという「俗説」は聞いたことはありますが、呼気の中のマイナスイオンというも
のが実際に身体の健康に対してどういう意味があるのかは不明です。
3.この実験結果とeイオンメガネコードとの関係も不明です。
「eイオン加工のチタンブレスレットの実験」
1.これも、プラセボは使われていますが、盲験をどのように行なったかは不明です。
2.結果はやはり呼気中のマイナスイオンの増加ということですが、それと身体の健
康状態の関連性が不明です。
「eイオン加工紐使用による血流変化」
1.紐をどのように使用したのかが不明です。プラセボは使われていますが、盲検の
方法も不明です。
2.プラセボ使用に比べて本物では血流速度は13%減少し、血流量は12%増加し
たとのことですが、一人にしか試験をしていないので、結論は出せないはずです。
3.これによっても、eイオン加工のメガネコードが心身によい影響をもたらすかど
うかは不明だと言えるでしょう。
「血液(赤血球)サラサラ効果試験」
1.何名の被検者がいたのか、不明です。
2.報告が簡単すぎて、実験方法も不詳です。プラセボとの比較結果も記述されてい
ません。
3.この報告書により「eイオンコードは血液をさらさらにする」と言うのは無理です。
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以上により、結論としてまとめを言いますと、今回お示しいただいた、いくつかの
治験報告書を見た限りにおいては、eイオン加工のメガネコードを使用することによ
り、貴社が宣伝しておられる「体内活性」「血液さらさら」「集中力UP」「ストレ
ス解消」「イオンバランス調整」などの、心身に対する良い影響を、広告宣伝に表示
するのは相当な無理がある、と判断せざるを得ません。
また、このコードが医療用具としての許認可を受けていないのにも関わらず、「血
液さらさら」などという効果効能を謳うのは薬事法に抵触する恐れもあるのではない
かと心配しております。
「提言」
貴社にて、eイオン加工のメガネコードが体によい影響を与えるかどうかを確認する
実験をさなればどうでしょうか。
実験A
【用意するもの】
eイオン加工をしたメガネコード10本。
プラセボ(eイオン加工をしていない、本物にそっくりのもの)のメガネコード10本。
被検者20人(20本、20本で、合計40人でもよい)
【方法】
実験の目的を被検者に伝える。全員に「これをメガネチェーンとして使うと体によい
効果があると言われているもので、どれくらいの効果があるかを調べます」と言って、
(1)コードを被検者に渡して、自分が使っているメガネに装着して、2〜3時間程
度、パソコン作業などに使ってもらう。普段メガネを使っていない人の場合には、素
通しのメガネで、快適なフィッティング状態にする。(その場合には実験開始の少し
前からメガネを掛けてもらっておく)
なお、コードを被検者に与える人には、すべて本物だと言っておく。
(2)実験開始の直前に、血圧、血流、血中コレステロール値(善玉、悪玉)、血糖
値、体温、その他必要と思われる身体データを測定する。
何を測定するかは、貴社が効能を謳いたいものとの関連で、医師との相談の上で決
めるとよい。
(3)コード試用終了後に、また、同じ項目に関するデータを取り、試用前と比較する。
このとき「試用開始まえに比べて気分はどうですか」「眼の疲れはどうですか」
などの質問に答えてもらうのもよい。
あるいは、何日間か(何週間か)常用してもらって、上記と同様に調べるのもよい。
実験B
こういう試験は難しいというのであれば、心身に何らかの不調のある人でメガネを
常用している人を選んで、コードを1ヶ月ほどメガネチェーンとして常用してもら
い、その後の変化(肩こり、体調、その他)を自覚的に尋ねるという方法でもよい。
ただし、もちろんながら、二重盲検法でやる。このやりかたなら、人数は、本物30人、
プラセボ30人というふうに大人数でやれるはずである。
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なお、いずれの場合にも、貴社と利害関係のない人物(団体)をアドバイザーやオブ
ザーバー、あるいは治験担当者として入れることにより、治験の過程や、結果に対す
る評価に関する公正さを証明できるわけです。