大木眼科 大木孝太郎先生への質問 |
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大木眼科 大木孝太郎先生 平成17年9月1日 眼鏡公正広告協会 堀田好孝 http://www.ggm.jp/gkkk/ 突然のお手紙で失礼します。 私たちは、眼鏡や眼科関連の広告に関して、消費者(患者)本位の立場から公正な広告が 行われることを願って、ネットを中心に活動している団体です。 貴眼科が平成17年8月29日に新聞に織り込みチラシとして入れられました広告の内容につき、 お尋ねいたします。 1.チラシの表に「単焦点レンズの見え方」と「多焦点レンズの見え方」の比較写真が ありますが、これは、それぞれどういうレンズで撮影したものでしょうか。 特に、多焦点メガネの方はメガネの累進レンズを用いたものなのでしょうか。 2.その「単焦点レンズの見え方」についてですが、この時計塔やオブジェは どう短かめに距離を見ても眼前10m以上先にありますが、それなのに、 その背後の建物と、オブジェや時計塔とで、こんなにも鮮明度が違うとは 到底考えられません。D値に換算すれば0.1D以下の差ですから。 なぜこんなに鮮明度が違うのかをお尋ねいたします。 3.遠近両用での見え方を示すのなら、遠くの景色と手元の本などを、どちらも鮮明に 見えている写真を用いるのが普通なのに、なぜあえてそうなさらなかったのでしょうか。 4.遠近両用の眼内レンズを治験で眼に入れる人には、レンズ代や手術費用の患者負担 (負担があるのなら健康保険を使うのでしょうか)はあるのでしょうか。 事後の検査に関する費用は、やはり患者が負担するのでしょうか。あるいは、 逆に新種レンズの治験に協力する患者ということで、レンズメーカーから謝礼をもらえる のでしょうか。 5.治験を申し込みながら定員から外れた人で、遠近両用の眼内レンズを希望する人の 場合には、実費でそれを入れてもらえるのでしょうか。そうだとしたら、レンズ代金と 手術代とを含めてどの程度かかるのでしょうか。 6.入れたレンズでの見え方が思わしくない場合には、従来型の眼内レンズに入れ替えて もらえるのでしょうか。 その場合の費用は誰が負担するのでしょうか。 7.遠近両用の眼内レンズにおける遠方および近方の見え方(像の鮮明度)は、 従来の眼内レンズに比較してどの程度劣ると予想されるのでしょうか。 8.遠近両用の眼内レンズが適応の眼と、従来型の眼内レンズが適応の眼とは、 何か違いがあるのでしょうか。 |
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これに対して9月14日に回答が来ました。 全文を紹介します。ただし、当方からの質問が引用されている部分は 重複掲載を避けて(質問*に対して)としました。 なお、あとで質問などをするための番号は当方が付しました。 |
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眼鏡公正広告協会 堀田好孝様 治験依頼者代理人 弁護士 藤枝 純、弁護士 森 幹晴 拝啓 時下ますますご清祥の段、お喜び申し上げます。 貴協会のご質問につきまして、治験依頼者に代わり、代理人である当職らが 下記のとおり回答申し上げます。 今回の臨床実験(以下「本治験」と言います)の被験機器である「眼内レンズ」は、 人口の水晶体の役割を果たす機器であり、加齢や外傷などにより水晶体が白く濁って視力が 著しく低下した白内障の患者様の治療を目的として使用されます。 従いまして今回の広告は、白内障の進行により眼内レンズによる手術を必要とする患者様を 対象として制作したものであり、視力矯正を目的とした患者様を対象としたものではございません。 (1→)なお「治験」とは、被検者様にご協力をいただき新しい薬や医療機器の 有効性と安全性を調べ、その結果をもって厚生労働大臣の承認を受けるための臨床試験です。 また、今回貴協会よりご質問をいただきました「医療法人社団・創樹会 大木眼科」は、 治験依頼者が本治験を依頼した医療機関に過ぎず、本治験及び今回の広告に関しましては 治験依頼者の責任の下に(←2)実施しております。今回の広告に関しましても被験者募集を 目的として制作されたものであり、当該医療機関に関する宣伝効果を目的としたものでは ございません。 本治験は薬事法などの規制の下に実施されており(←3)、法的見地からの説明が 必要な点もございますので、治験依頼者の代理人である当職らが回答申し上げます。 なお、今後のご連絡に関しましても当職らにて対応させていただきたく存じますので、 合わせてお願い申し上げます。 (質問1に対して) 比較写真につきましては、眼鏡を用いたものではございません。 多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズを模擬眼にセットし、 これをCCDカメラにて撮影した画像を参考に作製したシミュレーション画像を使用しております。(←4) (質問2に対して) まず、眼内レンズという医療機器は、眼鏡やコンタクトレンズ等のような視力矯正機器では ないので、一般的に広く認知されておりません。さらに多焦点型、単焦点型といった技術的 な点になりますと、広告紙面での詳細な説明は困難となります。 そこで今回、被験者様及びその御家族様に対し、まずは両者の相違点について、 簡単にご理解をいただけるような画像を掲載させていただきました。 ご指摘のとおり「単焦点レンズ」のシミュレーション像として、中間視より外れた遠用視像にて 焦点の違いを用いた像は不適切でございました。今後はご指摘の点について留意させてい ただきたいと存じます(←5)。 なお、実際に予想されます見え方につきましても、本治験眼内レンズでの臨床成績や シミュレーション画像を用い詳しく被験者様へ説明を行なっております。(←6) (質問3に対して) ご指摘の点、今後は留意させていただきたいと存じます。 ただし、先の2の回答でもご説明させていただきましたとおり、本治験眼内レンズ挿入後に 予想されます見え方につきましても、本治験眼内レンズの構造及びMTF結果より想定さ れます見え方や他の多焦点眼内レンズでの臨床成績やシミュレーション画像を用い、 治験にご参加いただく際に被験者さまに詳しく説明を行なっております。 (質問4に対して) 一般に、治験は治験依頼者が薬事法に基づき厚生労働省の了解を得て実施します。 治験費用は「特定療養費制度」と呼ばれる健康保険と被験者様の併用により賄われます。 この負担配分は、薬事法及び関連省令等に決められております。 治験に使用する薬や医療機器は治験依頼者様の負担となりますので、 通常診療の負担額を超えるようなことはございません。 なお、薬事法及び関連省令等により、治験依頼者から被験者様に直接謝礼金等を 支払うことは認められていません。(←7) (質問5に対して) 薬事法上、定員を超えた場合には、いかに被験者様が希望されても本治験機器である 眼内レンズの挿入は行えません。このような場合があることは、治験参加を希望される すべての被験者様に事前に書面にて説明しており、その際には、既に厚生労働省の 承認を取得した他の眼内レンズが通常の診療の過程を経て挿入されます。(←8) (質問6に対して) 被験者様の意思は何よりも優先されます。挿入した眼内レンズの見え方が思わしくなく、 既承認の眼内レンズに入れ替えを希望される場合には、治験担当医師と相談の上、 入れ替え手術を行なうこともありますが、通常は再手術が実際されることは少なく、 眼鏡等で矯正することがほとんどです。(←9) しかし、治験期間中に実施された入れ替え手術の費用につきましては、治験依頼者が 治療費を補償することが義務つけられております。 (質問7について) 本被験機器は薬事未承認品であり、治験実施中の情報に関しましては、薬事法上一般に 開示することが禁止されております。申し訳ございませんが、ご了承下さい。 (質問8について) 上記7と同様、当該被験機器は薬事未承認品であり、治験実施中の情報に関しましては、 薬事法上一般に開示することが禁止されております。申し訳ございませんが、ご了承下さい。 以上 ● |
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これを受けて当方は下記の手紙を送りました。 |
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藤枝純様、森幹晴様 平成17年9月16日 眼鏡公正広告協会 堀田好孝 私どもの問い合わせに対してお返事をいただきまして、ありがとうございました。 拝読しまして感じましたことや、まだ判然としない点についてお尋ねいたします。 (1→)について 眼内レンズを入れるのは、それにより視力が矯正されるからですので、 この記述には疑問を感じます。 (←2)について 名前を出してこういう広告をしたからには、その広告の内容に関してはその名前のところが 責任を持つのが当然であり常識ではないかと思うのですが、それは百歩譲るとして、 では、その治験依頼者とはどういう名称のどのような団体なのでしょうか。 営利企業なのか、財団法人などの公益団体なのかも不明です。(質問1) そして、そこが出した広告だとおっしゃるのであれば、なぜそこの名前が 書いていないのでしょうか。広告の内容に関する文責等がその団体にあるのであれば、 匿名というのはおかしいのではないでしょうか。(質問2) (←3)について これは当然のことであり、法治国家において違法な治験の対象者を募る広告など あり得ません。あえてこういうことをなぜおっしゃるのか分かりません。 (←4)について そうであれば、これはイメージ画像であるということを書き添えるべきだと思います。 (←5)について この広告は予め空けた余白に眼科の名前だけ入れるようにして制作されたもののようですが、 残部もまだ有るのではないでしょうか。 それならば、それはすべて廃棄処分になさるわけですね。(質問3) (←6)について これは当然なされなければならないことですが、その場合、たとえば眼内レンズを入れた 場合の遠方視の場合の裸眼または矯正視力(鮮明度)において、遠近両用の眼内レンズ ではほとんどの場合に単焦点の眼内レンズにまったく劣らない鮮明度が得られるはずだ と説明なさるのでしょうか。それともやや劣る場合があるという説明をなさるのでしょうか。(質問4) チラシの比較写真では、遠方の建物の鮮明度はまったく同じように感じますが。 (←7)について では、直接ではなく間接的に謝礼が支払われることはあるのでしょうか。(質問5) (←8)について チラシには「かかりつけの主治医の先生がいらっしゃる場合は、ご相談の上ご連絡ください」と してありますが、白内障手術もする眼科からの紹介で、大木眼科などの、治験をしてくれる 眼科へ患者さんが行った場合で、定員オーバーなどのために承認済みの眼内レンズを 入れることになった場合、その手術は元の眼科で行うことになるのでしょうか。 それとも患者さんが治験を希望して赴いた眼科で行なうのでしょうか。(質問6) (←9)について 遠近両用の眼内レンズで遠方や近方を見ていまひとつ鮮明度に欠けるという訴えが あった場合、眼鏡でカバーできるのは、眼内レンズの基本的な度数があっていない 場合であり、その場合には球面度数や乱視度数の不適合を眼鏡レンズで補うという 作用でなんとかなるのなら、それでいいでしょうが、そうではなく、遠近両用の 眼内レンズの構造そのものから来る光学的な不完全さが原因であれば、それはメガネで 何とかなる性格のものではなく、単焦点や累進の眼鏡レンズでもあまり改善しないの ではないかと推測するのですが、そんなことはないのでしょうか。(質問7) それから、こういうチラシ広告で治療希望者を募るというのは珍しいと思います。 白内障手術を行っている眼科へ直接話を持っていって治験を希望される患者さんを 探すということをしておられないのでしょうか。それをしておられないとすれば、 その理由は何でしょうか。(質問8) |
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これに対する返事は、かなり遅れて約1ヶ月近くあとの10月13日になって当方に届いた。 こちらの要望には添わずに、メールでなく封書で来た。 相手の手間を省くのに協力しようという気持ちはないようである。下記に原文のまま示す。 |
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眼鏡公正広告協会 堀田好孝様 治験依頼者代理人 弁護士 藤枝 純 弁護士 森 幹晴 時下ますますご清祥の段、お慶び申し上げます。 貴協会から頂戴いたしました平成17年9月16日付の書簡に対し、以下のとおりにご通知申し上げます。 今回ご指摘をいただいております「治験に係わる被験者募集の情報提供」は、平成10年9月29日医薬監第148号、 平成11年6月30日 医薬監第65号、平成13年1月31日 医薬監麻発第50号及び平成14年3月29日 厚生労働省告示第158号に準拠したものであり、販売を意図した「広告」には該当しません。 また、貴協会から、上記書簡において詳細にわたるご質問をいただきましたが、治験上の守秘義務により 治験の内容や治療機器に対する詳細な説明はできかねますのでご理解の程お願い申し上げます。 さらに、インターネット形式での回答のご掲載等(雑誌への掲載を含みます)につきましては、 逆に情報提供等に関する法規及び関連通知などに抵触する可能性がございますので、 お控えいただきますよう併せてご理解、ご配慮の程お願い申し上げます。 堀田様は治験について既にご存じと拝察いたしますが、 今一下記関連法規をご確認いただけますようお願い申し上げます。 ・平成17年7月14日 薬食機発第0714001号「医療機器の臨床の実施の基準の運用について」 ・平成10年9月29日 医薬監第148号「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」 ・平成11年6月30日 医薬監第65号「治験に係わる被験者募集の情報提供の取り扱いについて」 ・平成13年1月31日 医薬監麻発第50号「治験に係わる情報提供の取り扱いについて」 ・平成14年3月29日 厚生労働省告示第158号「医業若しくは診療所に関して 広告をすることができる事項を定める件」 なお、誠に勝手ながら、本回答をもちまして今後の回答は控えさせて頂きたいと存じます。 事情をご考推の上、ご理解賜りますようお願い申し上げます。 敬具 |
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当方からの番号つきの質問に個別に答えていただけなかったのは、まことに残念である。 それらの中に治験において医師等に課せられた守秘義務と関係のあるものが混じっているとは到底 思えないのであるが、 特に、質問1と質問2に対して具体的な回答がなされていないことは、 残念というよりも不可解だと言う他はない。 このたびのチラシ広告は、たとえそれが商品の宣伝であろうとなかろうと、とにかく広告には相違ない。 そして、この広告は、どこのどういう団体が出した広告であるのかということすら示せない、 おかしな広告だと言われても仕方がないと私は思う。 その「依頼主」に関して質問を受けてもきちんと責任を持って開示説明がなされないところの、 新聞折り込みチラシ広告……。そこに広告主であるかのごとく、唯一具体的な固有名詞として 入っている「大木眼科」に問い合わせをしても、当の大木医師は何もおっしゃらずに、 弁護士の先生が代理人としておでましになる新聞広告……。 なお、その依頼主の名を隠すことが「治験における守秘義務」なんかであるわけがない。 逆に「こういう広告においては試験を大木眼科に依頼した団体の名称を明示するのが義務である」 というのであれば、わかる話であるが。 そして、このたびのやりとりにおける「回答」(弁護士さんから当方への回答のことを意味するのであろう。 それ以外には考えにくい)をネットHPや雑誌に掲載することは、情報提供に関する関連法規などに 抵触する「可能性」があるから掲載をやめてほしいという、「依頼者の代理人」である弁護士さんが 当方に提された要望も、私には不可解である。 その「回答」は、回答者が当方から前もって「回答は雑誌やネットのHPに掲載します」と聞いていて、 その上で当方に対して出されたものである。 すなわち、今回の議論は、初めから「これは公論でいきますよ」と断った上での議論なのである。 その回答が、もしも雑誌やネットHPに掲載して違法となる可能性のあるものであれば、 法律の専門家である弁護士の先生が、そういう回答をなさること、それ自体がおかしいのである。 そういう「公開してはいけないこと」を「公開されるという前提の文書(質問への回答)に書き込んで しまわない」ために、弁護士の先生方が、医師の先生の代理人となって 当方に回答をなされたのではないのだろうか。 公開したら違法となりそうな内容の回答なのであれば、そういう回答を、公開予告をしている相手に 対してなすべきではない。そういう相手に対してなら、そういう抵触の可能性のない範囲での回答を するか、あるいは、まったく黙殺すればよかったのである。 掲載予告を知っていながら自分からの回答を、相手に対していまになって「法規に抵触の可能性云々」 と言って掲載を見合わせられたし、と言うのは、全くもっておかしいと思う。 もしも、「あとでよく考えたら、あの部分だけはちょっとまずかった。公益に尽くすべき専門職である 医師として(あるいは、弁護士として)あの部分は守秘義務に反する点があった」ということであれば、 どの部分がまずかったのかを、オフレコ文書などでおっしゃればよいのである。 それで当方が「なるほど」と思えば、そこを削除して雑誌やHPに掲載する。 あるいは、その掲載を見合わしてほしいとおっしゃる「回答」というのは、当方からの書簡(質問を含む) の文章をも含んだものであり、当方の書簡の中にも情報公開に関して違法性を持ち得る部分があるのですよ、 というご警告なのであれば、当方から送った書簡の中で、具体的にどの部分がどういう法規の第何条に 触れる可能性があるのかということをご説明いただきたいと思うのである。 弁護士の先生方は法律のプロであり、当方は素人である。 プロなら素人に対して詳しく的確な説明をわかりやすくおできになると思う。 そのご説明に当方が納得すれば、当方はHPの記事や雑誌への掲載記事の一部削除もさせていただくが、 今回のお二方の先生は、この話はもうこれでおしまいですとおっしゃっているので、 おそらく当方からそれを質問してもご回答はいただけないであろうから、重ねての先生方への質問は やめることにする。 最後に、あの広告の「依頼主」のかたに、もう一度お願いしておく。 今後は、広告の内容や表現や、「依頼主」について質問を受けた場合に、 逃げずにきちんと説明のできる広告をしてほしいと、私は思う。(堀田) ◎ |
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