乱視とメガネ



乱視でメガネを作るなら


(3)空間視の違和感を
最小限に抑える処方や
フィッティングができること。


 たとえば、
これまでは乱視が0.25しか矯正されていなかった
眼で、今回検出されたのが、
比較的馴染みにくい強度斜乱視
(たとえば、S−2.00 C−1.50 Ax25°)
であったという場合に、
球面度数は少し低矯正にするとして、
乱視をどうするか、
ということが問題になってきます。


 この例の場合であれば、
乱視はそのままでOKの人もいれば、
そのままでは到底無理、という場合もあります。

 その判断基準としては、
装用テストでの
反応を重視すべきなのですが、
それだけに頼るのではなく、ときには
「いまはこういう反応だが、
この人の場合であれば、
ものの3日も使えば慣れるだろう」

というような推察も重要になるのです。


 メガネによる乱視矯正においては、
一般的に、
度数も軸度もありのままに矯正するほうが
物がはっきり見える(矯正視力が良く出る)のですが、
しかしながら
そうすると空間視の違和感が増えるという
二律背反(ジレンマ)があるわけです。


 そこで、簡便な方法としては、
乱視の矯正度数を弱めたり、
軸度を水平または垂直に回したりすることによる
「空間視の違和感の緩解」
があるのですが、
その場合に、軸を何度まわしたら
何度(何割)分の乱視矯正能力の低下
が生じているのかということを知らないままに、
適当に軸を垂直または
水平に回して処方してある例
をまま見受けます。


 そういう措置は
特に眼科の眼鏡処方箋によく見られますが、
私は眼科の人に尋ねてみたいです。

あなたは、軸をたとえば15°まわして処方したら
乱視の矯正能力はどれだけ低下するのか
ご存じなのですか、と。


 ある人の眼に強い斜乱視があったとして、
それをどこまで矯正してよいのか、というのは、
その乱視の度数や軸度だけをいくら見つめても答えは出ません。

 その答えを求めるためには、
それまでのメガネの度数はもちろんのこと、
そのメガネの用途、用法、必要視力、年齢、装用テストでの反応、
当該調製眼鏡でレンズと眼の距離を
どこまで短くすることができるかということ、
などなどを考慮してこそ、
はじめて、その判断ができるのです。


 ですから眼科処方では、
その処方により枠もレンズも新しくメガネを作るといった場合
(現在使用のメガネのレンズのみ入れ替えるのではない場合)
であれば、
レンズと眼の距離に関しては不明なままに
度数の処方をしなければならないために、
この点において十分な判断ができない
といったことも起こり得るわけです。

なお、「角膜頂点間距離は12mmに決まっているから
そんなことを考える必要はない」ということをおっしゃるかたが
もしおられましたら、私はそのかたに、「あなたの眼鏡処方に
関する見識は、素人とは言えないまでも、プロとしては
初歩的に過ぎますね」と言っておきます。

(たとえば、アメリカでは角膜頂点間距離の規準は12ミリでは
ないのですが、では何ミリなのか、それはなぜなのか、
あなたはご存じですか?)

 以上をまとめてみますと、
次のようなことになります。


乱視を矯正するメガネは、
熟達した処方技術を持つ眼鏡技術者
に検査をしてもらって、
作るのがよい。

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